名古屋地裁,認知症の男性が線路に入り電車に接触死亡事故を起こした事象につきJR東海が遺族に安全対策が不十分として列車遅延に関する損害賠償を請求した訴訟で請求を認容


かなり珍しい内容の訴訟の判決が出ましたので取り上げます。

認知症の男性が,JR東海道線の線路に入り込んで接触死亡事故を起こしたところ,JR東海が,同居していた遺族に安全対策を怠ったとして列車遅延の損害賠償を請求したというあまり見たことのない訴訟を提起して,名古屋地裁が請求を認容したことが明らかになりました。

上記のようなまとめだけ見ますと,請求自体が厳しいように思えないでもないですが,詳しい事実を見ますと,家族の介護体制にやや疑問が生じてくるところがあり,それが本件の本質なのかもしれません。

家族は,福祉のサービスを利用しておらず,家族だけで介護していた模様ですが,監視を怠ったために徘徊が発生したということのようです。

この男性自体は認知症高齢者自立度4とされており,相当,ランクが上と言わざるを得ません。

高齢なので監視は無理との反論も出ていた模様ですが,それならば福祉サービスを使うなりなんなりするべきであり,徘徊が発生してしまうことをやむを得ずとすることはしない判断がされた模様です。

一般的な家族介護に求められる注意義務を言っているというよりは,かなりの重度であることから,その場合の注意義務を述べているということかと思われます。

また,鉄道会社は外部の原因に起因する事故の場合,請求をするようになってきています。人身事故が大抵のケースになりますが,相続放棄をしてしまうので実際の問題としてはすぐに解決してしまうのですが,本件ではそのような相続の問題ではなく,家族の固有の問題としての扱いであるところも特徴的であるようです。

裁判例情報

名古屋地裁平成25年8月9日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。