最高裁,明示的一部請求は残部についても裁判上の催告の効果があると判示


非常に教科書的な論点についての判例が6月に出ておりまして,遅れましたが取り上げます。

本当は多岐にわたる判示があり,もっと長いタイトルにするべきなのですが,短くまとめました。

 

民事訴訟法の教科書で出てきますが,一部請求と時効中断という論点があります。

債権のうちの一部請求をした場合に時効中断がどの範囲で生じるのかということでして,判例は明示的一部請求の場合は訴訟物を当該一部としていますので,訴訟物の範囲で時効中断するということで当該一部だけということで決着しています。

そういうことで,判例によって結論が出ている論点なのですが,消滅時効ぎりぎりに明示的一部請求をして,その認容判決の確定後に残部請求をしたものの,その第二訴訟提起の時点では消滅時効が完成するだけの期間が経過していたという事案で,残部についても第一訴訟で時効中断がされていたのかという点が争われて最高裁に至りました。

最高裁判所第一小法廷平成25年06月06日判決 平成24(受)349 未収金請求事件

事実関係を簡単にまとめますと,平成17年6月24日に時効が完成する債権について,Xが平成17年4月16日に内容証明で催告をして,同年10月14日に明示的一部請求の訴訟を提起しました。

この訴訟で,債務者であるYは,相殺の抗弁を出したところ,一部請求と相殺の外側説にたつと一部請求の金額を上回ったことから,平成21年4月24日に請求が全部認容されました。この結論は,平成21年9月18日にに確定しました。

この確定に先立ち,Xは相殺の抗弁を前提として計算される残部について第二訴訟を提起したところ,最初の催告から6か月以内に訴訟提起がされていないので時効消滅したとYが主張したというものです。

原審では消滅時効の成立が認められたことから,Xは,①明示的一部請求でも残部について裁判上の請求の準じる効力があり時効中断の効力が生じる,②①が認められなくても裁判上の催告の効力があり,第一訴訟の確定前に第二訴訟を提起した以上,時効中断の効力が生じていると主張したものです。

判例裁判例が,裁判上の請求に準じる効力を認めたものがいくつかあることからそれに該当するのだという主張と,該当しなくても裁判上の催告の効力はあると順序をつけて主張しているものであり,理論的に組み立てられれているように見えます。

しかし,明示的一部請求の場合に訴訟物は一部であることは判例上明らかですので①はどうみても無理があります。

そこで最高裁は①は認められないとしたのですが,②については,裁判上の催告の効力は認めたため,本判決がなされるに至りました。

明示的一部請求の訴えが提起された場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずるというべきであり,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了後6箇月以内に民法153条所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に中断することができると解するのが相当である。

しかし,裁判上の催告がどのような場合に認められてきたかを考えると,この場合が含まれるのはある意味当たり前でして,問題は,含まれるか否かではなく,催告を繰り返すことはできないことから,この期に及んで裁判上の催告の効力であると認められても意味がないのではないかという点です。

案の定,最高裁は以下のように述べて,最初の催告から6か月で消滅時効が完成するとしました。

催告は,6箇月以内に民法153条所定の措置を講じなければ,時効の中断の効力を生じないのであって,催告から6箇月以内に再び催告をしたにすぎない場合にも時効の完成が阻止されることとなれば,催告が繰り返された場合にはいつまでも時効が完成しないことになりかねず,時効期間が定められた趣旨に反し,相当ではない。
  したがって,消滅時効期間が経過した後,その経過前にした催告から6箇月以内に再び催告をしても,第1の催告から6箇月以内に民法153条所定の措置を講じなかった以上は,第1の催告から6箇月を経過することにより,消滅時効が完成するというべきである。この理は,第2の催告が明示的一部請求の訴えの提起による裁判上の催告であっても異なるものではない。

ある意味,当たり前の判示ということができましょう。したがって,これまた当たり前の帰結ですが,時効成立直前である場合には一部請求を選択すると,残部については時効成立となってしまう可能性が高いということになるわけです。理論的にはこのような帰結になるのは当然ということになりましょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。