長崎地裁,交通死亡事故を起こして失職した元国立病院職員に対して退職金を不支給とした処分を取消


退職金は,規定の定め方によりますが,減額や不支給を可能とする制度設計にしてあった場合,事実関係によっては退職金の減額や不支給が可能になります。

しかし,規程上根拠を有しており,裁量があったとしても,その処分の当否は別途問題となることもありえます。

国家公務員が交通死亡事故を起こして有罪判決を受けこれが確定したことから,国会公務員法に基づいて失職したため,退職金を不支給とした処分が行われたところ,元職員が取消訴訟を起こしたという事件で,長崎地裁が処分を取り消したことが明らかになりました。

有罪で退職金不支給違法、事故の元准看護師勝訴 : 最新ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

交通死亡事故を起こして有罪が確定し、失職した国立病院機構長崎病院(長崎市)の元准看護師の女性(60)が、退職金を全額不支給とした同機構の処分取り消しを求めた訴訟の判決が2日、長崎地裁であった。井田宏裁判長は「妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱し、違法」として処分を取り消した。

(略)

井田裁判長は「勤務状況も良好で不祥事を起こしたこともない。事故も私生活上のもので公務との関係性はない」と述べた。同機構九州ブロック(福岡市)は「判決文を見ておらず、コメントは差し控える」としている。

あくまで私生活上の行為であることと態様を見ていることから,重きに失するという判断をしていることがうかがわれます。

これは公務員の事件であるため,行政訴訟になっているわけで,民間企業で同じことになった場合には,判断枠組みが異なってくるかというと,私生活上の非違行為をどこまで重く扱ってよいかという見方についてはそれほど違わないという感じもするところです。

しかし,企業では内規でこういう場合にはこう処分するという懲戒基準を定めていることがあり,同じく不支給についてもその基準を事例ごとに明らかにしておくことがされていたとすると,契約法理の考え方から一定程度司法判断は後退してよいのではないかという気もするところです。

裁判例情報

長崎地裁平成25年7月2日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。