パナソニックの前名誉会長に対する退職慰労金が15億円に上るものの,開示の対象外であることが判明


1億円以上の役員報酬の開示制度ができたことはこのブログで何度もお伝えしていますが,昨年に1億円を越える退職慰労金を受けながら開示の対象外であったという事例があったことが明らかになりました。

それは,パナソニックの前名誉会長に対する退職慰労金がそれであり,15億円に上る模様である一方,パナソニックは2006年にすでに退職慰労金を廃止しており,退職時に支払うものの廃止時点で権利を取得していた分を支払うという内容であり,その会計処理はその年度にすでに行っていたため,開示の対象外となったことが明らかになりました。

役員報酬の開示制度は,有価証券報告書の企業内容の開示の中の一項目となっています。具体的には様式に書くべき項目ということになっています。その内容は,「企業内容等の開示に関する内閣府令」に定めがあるのですが,役員報酬の開示にかかる部分は以下のような内容になっています。

企業内容等の開示に関する内閣府令 新旧対照表(PDF:174KB)

(d) 提出会社の役員(取締役、監査役及び執行役をいい、最近事業年度の末日までに退任した者を含む。以下この(d)において同じ。)の報酬等(報酬、賞与その他その職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかとなったもの(最近事業年度前のいずれかの事業年度に係る有価証券報告書に記載したものを除く。)をいう。以下この(d)において同じ。)について、取締役(社外取締役を除く。)、監査役(社外監査役を除く。)、執行役及び社外役員の区分(以下この(d)において「役員区分」という。)ごとに、報酬等の総額、報酬等の種類別(基本報酬、ストックオプション、賞与及び退職慰労金等の区分をいう。以下この(d)において同じ。)の総額及び対象となる役員の員数を記載すること。
提出会社の役員ごとに、氏名、役員区分、提出会社の役員としての報酬等(主要な連結子会社の役員としての報酬等がある場合には、当該報酬等を含む。以下この(d)において「連結報酬等」という。)の総額及び連結報酬等の種類別の額について、提出会社と各主要な連結子会社に区分して記載すること(ただし、連結報酬等の総額が1億円以上である者に限ることができる。)。

上記のように既に開示していれば支払ったのが最近でも開示の対象とはなりません。

その既に開示していればの意味なのですが,パブリックコメントに対する回答で以下のように見解が示されています。

コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方

Q 会社法と同様、過去に開示した分(退職慰
労金の引当額等)については、重複して開示す
る必要がないことを明確に規定してほしい。

(略)

ただし、最近事業年度前のいずれかの事業年度に係る有価証券報告書に記載した報酬等は最近事業年度の有価証券報告書における開示の対象にはなりません(開示府令第二号様式記載上の注意(57)a(d))。したがって、個別開示の要否に係る1億円の判断における合算の対象になりません。

(略)

したがって,打切り支給ということでそれを決めた時点で会計処理をしてしまっていると,役員報酬の額として有価証券報告書で開示されているために,支払った時期に改めて開示する必要はないということになるわけです。個別開示であり報酬の総額の開示とは異なることになりますが,それでも重複は不要ということが示されているわけです。

したがって,公的な開示では掲載されないわけですが,報道で明らかになったのは,パナソニック自身が明らかにしたからであり,役員報酬の開示の流れに応じて,自主的に対応していることがうかがわれる一件でもあるようです。

 

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。