最高裁,不就労日のうち労働者の責めに帰すべき事由によるといえないものは,原則,年休の成立要件である出勤率の算定に当たっては出勤日数に算入するべきものとして全労働日に含まれるものとして,無効な解雇によって就労しなかった日はこれに該当すると判示


またもや長くて意味が分かりにくいタイトルで申し訳ありません。

単純に言うと,解雇されたもののその解雇が無効とされて復職した場合で,復職直後にはその前には不就労であるために年休が付与されるかが問題となった事案で,最高裁判決が出まして,無効な解雇をされていた日数は年休付与との関係では出勤扱いとするとするということが判示されました。

最高裁判所第一小法廷平成25年06月06日判決 平成23(受)2183 年次有給休暇請求権存在確認等請求事件

年休は労働基準法の原則だと,採用の年にはその前の半年間,それ以降はその前1年間に全労働日の8割出勤すると付与されます。

第39条(年次有給休暇) 
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
②使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

このように考えると,無効な解雇があって復職した場合,年休付与がどうなるのかがいささか不分明であるものの,常識的には年休が発生してしかるべきである感じがします。

しかし,まだ理論的には考えるべきところがあるです。

産前産後休暇の論点のところで出てきますが,年休の権利取得の要件との関係で産休の日を欠勤扱いすることは権利行使を抑制してしまい公序に反するとして無効とされています(最判平成15年12月4日労判862号14頁)。

しかし,この判例に対しては批判があり,出勤すべき日数からの除外,出勤率の計算式における分母分子双方からの除外,出勤扱いとするなど計算方法は複数あるので,どれが妥当であるかまだ検討の余地があるのではないかという指摘があります。

本件においても,会社側から反論があり,使用者の責に帰する不就労である無効な解雇にかかる日々は,全労働日から除くべきであるという主張がされています。

すると,全労働日もゼロですが,出勤した日もゼロであるので,結局年休は発生しないという結論を導いているわけです。

この反論は上記のような産休に関する学説の立場農地の一部を借用しているようですが,最高裁は,出勤扱いするべきとする立場をとりました。

その理由としては,年休の趣旨にまで立ち返って以下のように述べています。

法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は,法の制定時の状況等を踏まえ,労働
者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される

就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち,労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは,不可抗力や使用者側に起因する経営,管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として,上記出勤率の算定に当たっては,出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものと解するのが相当である。

そしてあてはめにおいて,無効な解雇となると労働者の責めに帰するところはない欠勤ということになるので,年休発生の要件を満たすとしたわけです。

欠勤について出勤扱いするか否かという点は就業規則で取り扱いを決めることができますが,控除の形で介入があるというのがこの分野の枠組みとなっています。

この判例は法的に介入を受ける場合について新たな一事が加わったということがいえるでしょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。