長崎労働局,長崎県内の派遣業者3社に福島第一原発に違法派遣をしていたとして,事業改善命令


原発の作業員の確保については法的に色々と難しい問題があるのではないかということが言われていましたが,やはり法的には違反があったということで,長崎労働局が長崎県内の派遣業者に事業改善命令を出したことが明らかになりました。

福島第一原発 派遣業者に初の行政処分 NHKニュース

東京電力福島第一原子力発電所の配管工事に、作業員のべ510人を違法に派遣したとして、長崎労働局は、長崎県内の3つの会社に対して労働者派遣法に基づく事業改善命令を出しました。

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事業改善命令を受けたのは、いずれも長崎県内にある大和エンジニアリングサービスとアグレス、それに創和工業の合わせて3社です。
長崎労働局によりますと、大和エンジニアリングサービスは、おととし7月から8月にかけて、アグレスと創和工業から派遣された作業員を福島第一原発の配管工事に従事させていました。
作業員のうち、のべ341人については労働者派遣法で派遣が禁止されている業務に就き、のべ169人については職業安定法で禁止している「多重派遣」にあたると見なされるということです。

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問題となった労働者派遣法違反行為は二種類あり,①多重派遣と②建設業に派遣をしたということとされています。

多重派遣というのは,派遣業者が自分で派遣労働者を確保できずに,他の派遣業者に丸投げして,派遣先と派遣契約を締結した派遣元以外が労働者を派遣している態様のことです。

このような派遣を下請けに出すような形態は,労働者派遣には該当しないと解されており,派遣に該当しないということは労働者供給になりうるということで端的に違法行為になるわけです。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

第2条(用語の意義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

さて,下手をすると,派遣先は直接雇用をしないといけなくなりますが,この改正はまだ施行前なので本件には適用はないことになります。

第40条の6
労働者派遣の役務の提供を受ける者(国(特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)及び地方公共団体(特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)の機関を除く。以下この条において同じ。)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。
一 第四条第三項の規定に違反して派遣労働者を同条第一項各号のいずれかに該当する業務に従事させること。
二 第二十四条の二の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
三 第四十条の二第一項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
四 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第二十六条第一項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。

 

建設業派遣ですが,労働者派遣は,一定の禁止業務を法律で列挙してそれ以外には派遣をしてよいという立てつけになっているのですが,この中に建設業が上がっています。本件では配管工事に従事していた派遣労働者がいたということで建設業派遣に当たるとされたということになります。

第4条
何人も、次の各号のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行つてはならない。
一 港湾運送業務(港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)第二条第二号に規定する港湾運送の業務及び同条第一号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として政令で定める業務をいう。)
二 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。)
三 警備業法(昭和四十七年法律第百十七号)第二条第一項各号に掲げる業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣(次節、第二十三条第二項、第四項及び第五項並びに第四十条の二第一項第一号において単に「労働者派遣」という。)により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務

法的には,派遣法の基本的な内容に抵触しているということが明らかでどのような法的問題であるかということは把握しやすいのですが,作業員の確保という緊急命題が臨時的ではなく恒常化しつつある状況の中でどのように対処するべきなのか,労働者派遣法を超えた問題があり,そちらの方がはるかに深刻な問題であると思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。