名古屋地裁,「仕組債」のリスクに対する説明が不十分だったとして,73歳の女性が野村証券に対して,約1億9300万円の損害賠償を請求した訴訟で,説明義務違反を認め,約4100万円の一部認容


高齢者に対する金融商品の販売は,お年寄りの認識力・理解力の問題等もあり,損失を被る事態が続発しており,消費者事件の一類型となっています。

こういった金融商品によって高齢者が損失を被った場合の損害賠償請求の組み立て方は定番化しており,第一には適合性原則違反,第二に説明義務違反とするものとなっています。

適合性原則違反の場合,金融商品取引法違反で重いのですが,説明義務違反だと業等府令違反にとどまりますので,重みが違います。

※適合性原則と説明義務違反についての基本的説明については以下のエントリーで書いておりますので,ご覧ください。

JAPAN LAW EXPRESS: 大阪高裁、マイカル社債訴訟で野村證券に説明義務違反で一部賠償命令

そのため,説明義務違反にとどまると,過失相殺の結論になることが常でして,本件も報道によるとそのような落ち着きになったとうかがわれます。

「仕組み債」の説明不十分 野村に4100万円賠償命じる :日本経済新聞

「仕組み債」と呼ばれる高リスクの金融商品取引で、リスクに関する事前説明が不十分だったため損害を受けたとして、名古屋市の女性(73)が野村証券に約1億3900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は19日、約4100万円の支払いを命じた。

上田哲裁判長は判決理由で「債券は内容が複雑で相当リスクがある」と指摘。「原告は経済的知識もなく、担当者の不十分な説明により、債券の性質や特徴を正確に理解できなかった」として、商品販売時の説明義務違反を認めた。

勧誘自体は適法とし、「資料を配り不十分ながら説明している」と原告側の過失も一部認めた。

判決によると、女性は2006~07年、野村証券から計約1億9900万円分の債券を購入。事前にリスクを理解できず、約1億2600万円の損害を出した。

(略)

上記報道からは,勧誘自体は適法としていることから,適合性原則違反ではないとしたことが伺えます。

また,説明義務違反での過失相殺の根拠としてどのような事実を指摘しているかも注目するべきところです。この件に限らず,ほぼ定番化しているのですが,資料を配布して一応の説明をしていると,大幅な過失相殺につながります。損害額から見ると,実質的には,ほとんど請求は認められないような結論ということになりまして,これも肝に銘じるべきところでしょう。

裁判例情報

名古屋地裁平成25年4月19日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。