有期雇用が5年で無期転換ということは,わかりやすいフレーズとして今後広がっていくものと思われますが,それに対する経営側の反応と労働側の反応とでもいけるものが早速発生したことが明らかになりました。
早稲田大学が、今月から実施した非常勤講師の雇用期間の上限を5年とする就業規則を巡って、作成手続きに問題があったとして、労働組合のメンバーらが8日、大学の理事らを労働基準法違反の疑いで検察庁に刑事告発しました。
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告発状によりますと、労働基準法では就業規則の作成にあたって従業員の過半数の代表者などの意見を聴くよう定めていますが、早稲田大学が今月から実施した非常勤講師の雇用期間の上限を5年とする就業規則を作成した際、理事らはこうした手続きを取っていなかったとしています。
組合によりますと、早稲田大学には、非常勤講師らはおよそ4200人いるということです。
今月から改正された労働契約法では、非常勤講師ら雇用期間に限りのある人が5年を超えて働き続けた場合、期間に限りのない無期雇用に切り替えることができることになっていて、松村委員長は「大学は法律の適用を避けようとしているのだろうが、非常勤講師の安定した雇用に率先して取り組んでほしい」と話しています。
就業規則の変更に当たっては,過半数代表か過半数組合の意見を聞くことが義務付けられていますが,これをとらずに非常勤講師の雇用期間を5年に制限して,無期転換権が発生しないように制度的に手当てをしたという主張のようです。
過半数代表等の意見聴取には罰則がついていますのでこれに抵触するとして刑事告発をしたということのようです。
しかし,日経の報道によると,その手続き違背というのは以下のようなものであるようです。
就業規則作成で不正、早大総長ら告発 非常勤講師組合 :日本経済新聞
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告発状によると、早大側は今年2月、代表者を不信任とする投票用紙について、講師らの多くが不在の講義期間終了後に配布したため、「自らの意思で代表者を選出する機会を与えられず、手続き違反があった」と主張している。
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労働法を勉強された方ならご存知と思いますが,就業規則改定の際の意見聴取にはあまり実質的な意味はありません。選出についても選挙が望ましいのはそうですが集会で挙手して選んでもいいですし,そもそも意見が反対となっていたり意見の表明がなくても改定は可能です。
したがって代表選出の重みもそれほどはなく,仮に反しても罰則も罰金にすぎません。
したがって社会的に注目を集めることに意味があるのだと思われます。
一方で,5年の人気の設定が有効かということは別であり,雇止め法理に照らして判断されるとことになりますので,大学側も定めればこれで無期転換の問題は生じず大丈夫ということにはなりません。
しかし,教職などは任期付で雇止めをしてもそのまま受け取られやすい類型であるため,雇止めはしやすい職種であるのも確かです。すると逆に無期転換との絡みがすぐに想起される5年にすることもなかったのではないかというところで,労務管理の妙について色々と考えさせられるところです。
社会の注目を集めるのが目的でしょうからそれは達成されそうですが,この事案に含まれる実際の意味を考えると,針小棒大といったところでしょう。