大王製紙のタイの関連会社に不正経理があることを金融庁に告発した大王製紙の社員が,懲戒解雇されたことに対して,解雇無効確認訴訟を提起


大王製紙がタイの関連会社において不正経理があるとして,金融庁に告発をした同社社員が,会社の秘密を漏らしたとし役職を解かれる降格の上,出向を命じられ,拒否したところ,懲戒解雇されたということが起きていたそうです。

これに対し,当該元社員は,公益通報者として保護されるべきであり,人権の濫用であるとして,解雇無効確認と損害賠償請求の訴訟を提起したことが明らかになりました。

「内部告発後に解雇、不当」 大王製紙元社員 地位確認求め提訴へ – MSN産経ニュース

内部告発後に降格処分となった末に解雇されたのは不当だとして、大王製紙(愛媛県四国中央市)の元課長の男性(50)が、社員としての地位確認や慰謝料などを求める訴えを東京地裁に起こす方針を固めたことが17日、関係者への取材で分かった。

関係者によると、大王製紙経営企画部に所属していた男性は昨年12月、タイの現地法人で重大な法令違反がある▽中国の現地法人でも設立の手法や手順に不備がある-などとする内部告発の書面を金融庁や東京証券取引所に提出した。

その後、男性は今年1月1日の辞令で人事部付けに異動。2月1日には「業務上知り得た秘密を漏らした」などとする理由で役職を降格となり、北海道赤平市にある関連会社の営業所長として転出する辞令が出た。男性は2月1日以降、出社を拒否し、3月11日付で無断欠勤を理由に懲戒解雇となった。

(略)

上記報道では提訴を検討ということですが,提訴は19日になされた模様です。

内部告発した社員に対する人事の問題というと,オリンパス事件が想起されますが。

このオリンパス事件では,内部告発そのものは公益通報者保護法に照らして公益通報であるかが微妙というか該当しないものだったのですが,それでも人事権の濫用であるかは別に問題であることから,結局,控訴審で判断が逆転し,濫用で違法ということになりました。

本件もこれと近い構造であることから,同種の枠組みで考えるのがいいだろうと思いますが,オリンパス事件と異なるのは,内容からすると公益通報にあたるかもしれないという点です。

ただ,あくまで外国法人でのことなので,どの法令に反することかというのを検討すると若干難しい問題はありそうです。公益通報者保護法で公益通報となるのは,国内法で刑罰法規に抵触するものを,しかるべきところに通報した場合なのです。

ですので,公益通報に該当するかは一つ争点となりうるところです。

それでも,さらに進んで人事権の濫用ではないかという点は,公益通報に該当するのか否かとかかわらず別途検討するべき点ですので,なお問題とはなりうることになります。

業務上の必要性等から考えるわけですが,その前に,会社の秘密を漏らしたということで役職を解いていることと,出向先が北海道であるということを考えると,報復的なものだったのではないかという点が想起されるところです。

もっとも,これは労働者側から整理した主張ですので,会社側には別の事情があるのかもしれません。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。