大阪地裁堺支部,成年後見人であった親族が成年被後見人の預貯金を横領したのは,後見監督人の弁護士が職務を怠ったためとして,弁護士に対して損害賠償請求をした事案で,4100万円の支払いを命じる一部認容の判決


残念なことですが成年後見人に親族が就任して,被後見人の財産を食い物にしているという例はままあるようです。

しかし,そのような事案について後見監督人の責任を肯定したという衝撃的な判決が出ました。

後見監督人は弁護士であったのですが,請求額である4400万円に対して,約4100万円の請求が認容されており,ほぼ全額認められたといっても過言ではない結果となっています。

一方でこの事件では国に対しても請求しているのですが,それは棄却となっている模様です。

成年後見人の横領を見逃した監督人に4100万円賠償命令 大阪地裁堺支部 – MSN産経ニュース

知的障害がある奈良県の女性(59)の預貯金を成年後見人の親族に横領されたのは、後見監督人だった弁護士や家裁が注意を怠ったためだとして、女性が元監督人の弁護士と国に約4500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、大阪地裁堺支部であった。大藪和男裁判長は「選任から3年以上、何も調査せず監督義務を怠った」と判断し、弁護士に約4100万円の支払いを命じた。国への請求は棄却した。

後見監督人は後見人が適切に活動しているか否かをチェックする役割がある。後見人による着服事件が相次ぐ中、後見監督人の賠償責任が認められるのは異例。

(略)

監督人というのは必ず設置されるものではなく,それゆえに補充的な印象をもってしまうのですが,置いた以上しっかりやらないといけないのは当然のことです。それでも非常に重い結論と感じざるを得ないのですが,実は本件ではかなり特殊な事情があったようであることが報道からうかがえます。

判決によると、奈良家裁葛城支部は平成17年3月、弁護士を後見監督人に選任。20年9月、当時後見人だった親族の男性らが女性の預貯金から計約7500万円を着服したことが発覚した。弁護士は家裁が必要な調査をしていると誤認し、選任後の3年半、女性の財産状況を調査していなかった。

この家裁が調査をしていると誤認して,自身は何もしなかったというのが本当ならとんでもない話で,これだとさすがに重い結論になっても致し方ないかもという気がします。

この報道の通りだとすると,監督人であっても,年1度は通帳の確認をするなど,ごく普通に行われている実務をこなしていても責任を認められたような事例ではないことになり,過度の一般化ができない事件であると思われます。

裁判例情報

大阪地裁堺支部平成25年3月15日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。