最高裁,高年齢者雇用安定法9条2項の継続雇用の対象となる基準を定めている企業が継続雇用を希望する労働者の基準該当性の判断を誤って不採用としたものの実際には基準を満たしていた場合において,再雇用されたのと同じ雇用関係の存続を認める


長いタイトルのうえ,昨年に出ていた判例で申し訳ありません。しかし,今年4月1日からの高年齢者雇用安定法の改正法の施行後にも意味を持つ判例なので取り上げます。

改正法で廃止されてしまったのですが,高年齢者雇用安定法では企業が求められる継続雇用義務を果たすのに,継続雇用する労働者を採用する基準を労使協定で設けているなら,その義務を果たしているとみなす制度がありました。

改正前

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

第9条(高年齢者雇用確保措置)
定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止
2 事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項第二号に掲げる措置を講じたものとみなす。

この基準とは要するに人事考課を参考にして継続雇用の採否を決めるなどと定めることができるものです。何でもいいわけではなく,具体的で客観的であることが求められると厚生労働省は説明していたため,色々な人事考課を数値化して何点以上なら再雇用するなどと制度設計している企業が多かったと思います。

この制度を有している企業において,継続雇用を希望した労働者が会社から基準を満たしていないとして継続雇用に採用されなかったのですが,労働者が雇用契約上の地位確認と賃金請求をした事案で,実は正しく算定していなかったもので,正しく算定すると基準を満たしていたとして,再雇用されたのと同様の地位にあることが確認されて賃金請求が認められるという判決が出ました。

最高裁判所第一小法廷平成24年11月29日判決 平成23年(受)第1107号 地位確認等請求事件

この企業は,基準で以下のようなものを設けていました。

高年齢者の在職中の業務実態及び業務能力につき作成された査定帳票の内容等を所定の方法で点数化し,総点数が0点以上の高年齢者を採用(する)

そして,0人に満たないとして再雇用しなかったのですが,計算しなおすと1点であり,再雇用しなかったのは誤りであったと原審までの事実認定で明らかになりました。

すると,何らかの形で救済されるべきではあるわけですが,原審と最高裁は,損害賠償ではなく,雇用関係上の地位を認めたのです。

法の趣旨等に鑑み,上告人と被上告人との間に,嘱託雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり,その期限や賃金,労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになるものと解される

継続雇用制度では労働者はいったん退職しているため,新たな採用という側面があります。すると,使用者側に採用するという行為が内情,労働契約の成立を認めていいものか疑問が生じるのですが,最高裁は高年齢者雇用安定法の趣旨に鑑みるととして,雇用契約の存在を肯定しました。

そして,上記部分の後に判例を引用しており,東芝柳町事件と日立メディコ事件を引用しています。有期の雇い止めが問題となる事件では,更新という行為がないと新たな期間の労働契約の成立はあり得ないわけですが,いわゆる雇止め法理として,雇止めが許されないということで労働契約上の地位を認めたことがあるわけです。この処理と近いものがあるということだと思われます。

いったん退職している労働者との間で労働契約上の地位を認められたということは非常に重く,大きな意味を持つ判決と思われます。

しかし,最高裁は例外につながることも付言しています。

(従前の)雇用契約の終期の到来により被上告人の雇用が終了したものとすることは,他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない

これが何を指すのかはいまいちはっきりとしませんが,基準を満たさないからという理由で継続雇用を拒否しているわけですが,それ以外の継続雇用を拒否できる事由に該当していることなどを指すのではないかというような気がいたしますが,考えるヒントとなる部分がないのでよくわかりません。

この判例は,法改正で廃止されてしまった部分にかかるものであるため,4月1日以降は意味を持たないかというとそうではありません。

4月1日以降も経過措置として,基準を持っていた企業は,特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢以降は,継続雇用にかかる労働者の基準を使用することがまだできるため,依然として基準の使用の場面があるのです。経過措置ではあるものの当面の実務においては必ず注意しないといけない判例といえるでしょう。

また,継続雇用の基準に限らず,高年齢者雇用制度全体において,有期雇用の更新の手続きと同じく,いい加減に運用をしていた場合には,雇用継続上の地位が認められるという発展すらしかねない潜在力を秘めた判例に思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。