東京地裁,第一興商が視覚障害の労働者を休職期間後に自然退職としたのを無効と判断


色々な会社の実例であると思いますが,就業規則で一定の事由の場合に該当する労働者は自然退職とする旨の規定をおいていることがよくあります。

特に病気休職の場合,休職期間明けにその症状が治っていなかった場合に自然退職又は解雇とする例があると思われます。

しかし,自然退職とするなどと制度設計しても,その通りの効力があるかは別問題で,やはり解雇権濫用法理に類する判断枠組みで検討されることになります。

裁判例では,配転可能性も含めて検討する立場が主流で,休職前の原職に耐えられないからということで退職扱いとするとその判断を無効とされる場合があり得ます。

そのような事例がさらにでましたので,取り上げます。

カラオケで有名な第一興商が,視覚障害を申し出た労働者に休職を命じた後に,治癒しなかったとして退職となったのですが,労働者が無効であるとして,訴訟の支払いを求めたという事件で,東京地裁は原告の訴えを認めて,給与の支払いを命じました。

朝日新聞デジタル:「視覚障害で退職は無効」 第一興商に給与支払い命令 – 社会

視覚障害が治らないことを理由に退職させられたとして、通信カラオケ大手「第一興商」(東京)の従業員だった男性(38)が雇用関係の確認などを求めた訴訟で、東京地裁(西村康一郎裁判官)は25日、退職を無効とする判決を言い渡した。退職扱いとなって以降、毎月26万円余りの給与の支払いを同社に命じた。

男性は2008年に発症して失明に近い状態になり、同社に申し出たところ、09年1月から休職を命じられた。1年間休職して治らなかったとして、就業規則により退職となった。

判決は、休職中のリハビリにより、退職時点で男性の視力は0.1程度まで回復していたと指摘。「事務職の仕事は可能だった。多くの部門がある大企業であり、配置する職場はあったはずだ」と述べた。

(略)

注目するべきは,原職には耐えられないとして,他の部門で労務提供が可能であるくらいには回復しているという判断のところでしょう。

大きな会社の場合には,病気休職明けには,原職復帰以外にも配転によって担当できる労務がある場合にはそちらに配転するべきであり,退職扱いとしてはいけないという法的判断がここにも表れています。

事業所によっては自然退職の就業規則の規定をおいているとその通りにできると誤解されている例もあるかもしれませんが,書いておけばその通りになるところとそうではなく裁判所の介入のありうるところが就業規則にはあるというわけです。

裁判例情報

東京地裁平成24年12月25日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。