最高裁,新設分割がされた場合,新設分割設立株式会社に債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は,詐害行為取消権を行使して会社分割を取り消すことができると判示


濫用的会社分割についてこのブログでも何度か取り上げたことがありますが,最高裁が詐害行為取消権によって会社分割を取り消すことができる場合を認めました。

最高裁判所第二小法廷 平成24年10月12日判決 平成22(受)622 詐害行為取消請求事件

この論点については,

  • 会社分割が組織法上の行為であり,財産権を目的とする行為ではないとして,詐害行為取消権の対象ではない
  • 詐害行為取消権による会社分割の取り消しを認めると,会社分割無効の訴えに効力を争う方法を限定した意味がなくなる

などの有力な認めるべきではないという主張が従来からありました。

しかし,最高裁は,

  • 会社分割が詐害行為取消権の対象とすることを否定する明文の規定は存在しないこと
  • 会社分割において債権者異議は,分割会社に対して請求をすることができる債権者はいうことができないのが原則であることから,詐害行為取消権で保護する必要性がある場合はあること

を根拠として言及したうえ,詐害行為取消権は相対的取消であることから以下のように述べました。

詐害行為取消権の行使によって新設分割を取り消したとしても,その取消しの効力は,新設分割による株式会社の設立の効力には何ら影響を及ぼすものではないというべきである。

このことから,組織法上の行為であるとはいっても,取消によって法人格が消滅するなどにつながるわけではないので,組織法上の行為であるということから詐害行為取消権の対象とはならないという言説を否定しました。

以上から,最高裁は,端的に以下のようにまとめています。

株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は,民法424条の規定により,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができると解される。

そして,相対的取消という点から効果については以下のような内容になると付言しています。

この場合においては,その債権の保全に必要な限度で新設分割設立株式会社への権利の承継の効力を否定することができるというべきである。

要するに,取消の限度で財産の移転だけを否定することになるという結論となりました。

このように最高裁は詐害行為取消権による濫用的会社分割への対処について正面から取消を認めたことになりました。この論点について問題となる事例がちらほらでてきていたこともあり,実務的には大変大きな意味を持つ判例と思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。