厚生年金基金からの脱退を認めた長野地裁判決の補足情報


昨日取り上げましたJAPAN LAW EXPRESS: 長野地裁,加入事業所が財政の悪化を懸念して厚生年金基金からの脱退を請求した事件で請求を認容の続報です。

本日の報道で,長野地裁判決の判示内容がやや詳細に判明しましたので取り上げます。

長野地裁判決は,無限定に事業所が厚生年金基金から脱退する自由があることを認めたわけではなく,やむを得ない事由がある場合に限定している模様です。そのやむを得ない事由の例示として,事業の不振などを挙げており,基本的には社会保険であることから脱退の自由は制限されることを前提としていることは確かであるようです。

そのうえで,「基金との信頼関係の破壊が重要な要素となる」としており,信頼関係破壊がやむをえない事由の要素となるとの枠組みになっているようです。

まるで賃貸借の法理のようになっていますが,まったく先例のない分野についてかなり大胆な法理を組み立てたといえそうです。

この裁判例自体は,立法の不備についても指摘しており,厚生年金保険法の改正を促しているようなのですが,訴訟の問題だけで考えますと,このようにかなり独自の法理を打ち立てた内容になっていると,上級審で争われた場合に覆されるか,結論は維持されるにしても法的構成が修正されることがありうるところです。

一つの厚生年金基金がそこまで争うのかはわからないところですが,政策形成的な意義はともかくとして,この裁判例の安定性は微妙であるかもしれません。

裁判例情報

長野地裁平成24年8月24日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。