長野地裁,加入事業所が財政の悪化を懸念して厚生年金基金からの脱退を請求した事件で請求を認容


AIJの余波でもあるのですが,厚生年金に大きな衝撃をもたらす裁判例が出ました。

AIJの件等によって財政が悪化していた長野県建設業厚生年金基金に加入している事業所が,これを懸念して脱退を求めたところ,基金の意思決定機関である代議員会で否決されたため,脱退を求めて提訴したところ,長野地裁は脱退を認めました。

厚生年金基金脱退、認める判決…全国に影響か : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

長野県建設業厚生年金基金が脱退を認めなかったのは不当として、長野県の建設会社が脱退の確認を求めた訴訟の判決が24日、長野地裁であり、山本剛史裁判長は原告の請求を認めた。

(略)

会社側は、特別掛け金を支払うなどの手続きをすれば、代議員会の議決はなくても脱退できると主張。基金側は、加入企業の脱退が相次ぐと基金が存続できなくなるため、「脱退の自由」は制限されるとしていた。

(2012年8月24日13時36分  読売新聞)

財政の悪化している厚生年金基金は多いため,雪崩現象が発生する恐れがあり,影響が注目される裁判例といえます。

法的な整理ですが,厚生年金保険法では,基金から出て行ってくれという場合の脱退要件については規定があるのですが,加入している側からの脱退について規定を欠いています。そこで,事業所の加入があるたびに規約を変更しているという形をとっていることの逆として,規約変更が認められないと脱退させないという扱いがされています。

この根拠は,上記報道の引用中に記載がありますが,保険が成立しなくなってしまうので脱退の自由が制限されるのだというところにあります。

これは実務の通説的理解であると思われ,これによって身動きが取れなくなっている事業所は多数あると思われます。

非常に影響が大きくなりうる判決と言えると思われます。

また,このような法律の規定の仕組みは,健康保険でも同じになっており,この厚生年金基金のことは健康保険組合にもそのまま妥当しうる点があります。

この点からも非常に重い裁判例であり,控訴されるのかも含めて,今後が注目されます。

裁判例情報

長野地裁平成24年8月24日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。