最高裁,マンション管理組合の役員に対する誹謗中傷等の行為が,誹謗中傷の域を超えて,管理組合の業務や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には,「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たる余地があり,差止訴訟の対象となると判示


取り上げ損ねていた少し前の判例を取り上げます。

今年の1月に出たもので,このお盆の真っ最中に出たわけではないのでご注ください。

 

マンションの管理組合関係の判例が出ていましたので,取り上げます。

最高裁判所第三小法廷 平成24年01月17日判決 平成22(受)2187 名誉毀損文書頒布行為等停止請求事件

分譲マンションの住民が,マンションに関して迷惑行為をした場合,やめるように訴訟で求めることができます。

建物区分所有法6条で,区分所有者は,建物の管理又は使用に関して共同の利益に反する行為をしてはいけないことになっており,これに反した場合には,57条より,訴訟提起の要件はかなり重いですが,管理組合全体で差止めができるというような規律になっています。

 

建物区分所有法

第6条(区分所有者の権利義務等)
区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
3 第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。

第57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。

この区分所有者の共同の利益に反する行為に該当するかについて,あたらな判断がされたのがこの判例です。

本件は,区分所有者の一人が,マンション管理組合の役員に積み立てている修繕積立金を恣意的に運用したなどと中傷をしたり,マンションの工事を請け負った業者に嫌がらせのような行為に及んだために,残りの全員で差止請求をしたというものです。

原審は,個人に対する行為で,建物の管理に関するものとは異なるという点から,請求を棄却するべきとしていたのですが,最高裁は一転して,役員に対する誹謗中傷でも,区分所有者の共同の利益に反する該当する場合があるとして,この点についての事実認定をするために破棄差し戻しをしました。

 

最高裁の考えというのは,度を越した誹謗中傷だと,おそれのあまり役員のなり手がいなくなってしまい,建物の管理に支障がでるという点と,本件では業者に対しても行為に及んでおり,建物に影響が出うるという点に注目して,管理組合の業務の遂行や雲煙に支障が生じる可能性があり,その場合には,共同の利益に反する行為に当たる余地があるとしたものです。

要するに二段階の事実認定がいるような枠組みになっているわけで,この点について差し戻しているわけです。

事実なら相当逸脱した迷惑行為ですので,認めうる可能性は示しているものの,このように慎重な態度にしなくてもよさそうに思えますが,建物区分所有法57条以下の特殊な訴訟は,多数決で区分所有者にかなりの権利制限をすることができるという相当異質な訴訟類型であるために,どうしても慎重にあるべきと判断されることは作用しているのだと思われます。

いずれにせよ,いわゆる迷惑行為で,差止訴訟の対象としうるものについて実例ができたわけで,実務的には大きな意義を持つものといえるでしょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。