退職手当は労働法上根拠のあるものではなく,使用者が制度を設けたら支給されるという性質のものです。給料を天引きしていて,あとでまとめて払うというような内実のものなら別ですが,ひとまずは自由選択の制度です。
しかし,公務員ではそうではなく,地方自治法では,条例で定めれば退職手当を支給できるとということが規定されており(204条),その他の箇所にも退職手当を支給することを前提としている規定が存在しています(252条の17,252条の18の2など)。
したがって,地方公務員には退職手当は確実に支給されるものとなっているのですが,これは常勤職員に限られている模様です。
地方自治法の規定上は,短時間勤務職員にも条例で定めれば退職手当を支給できるのですが,そこまでしていないのが多いのでしょう。
したがって,パートおよび地方自治法に規定のないその他の非正規の職員には,退職手当がないのが実情であるらしく,待遇改善のために民主党のワーキングチームが退職手当を非正規職員にも支給することを求める地方自治法の改正を求める報告書を作成したことが明らかになりました。
一般の事業所で,非正規雇用に退職手当を出している例はすくないので,公務員の高待遇という話になりそうですが,地方自治体にとってこれはありがたい話でしょうか。人件費の増大を招きかねないので,その分,地方交付税とかで国から資金が来るなら話は別ですが,そうではないなら,たまらない話になりましょう。
部分的に改善しようとしても,他がたたないだけですので,実現の可能性も微妙でしょう。
そもそも立法技術的にもどうするのでしょうか。
現行の204条で,列挙している職員の種類を増やすだけなら簡単でしょうが,それだと退職手当を支給しようとする自治体は出てこないでしょう。
退職手当を支給しないといけないという条文を新設するのだとすると,手当をいろいろと列挙しており,条例で定めれば支給できるとしている規定の中に,退職手当だけは支給が義務ですという条文を入れることになってしまい,明らかに変です。
場当たり的で,深く考えられていないようにうかがわれてしまうのですが,実際の報告書ではもう少しちゃんとしているのでしょうか。