最高裁,建物区分所有法59条所定の59条競売請求訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合には,その譲受人に対して競売請求訴訟の認容判決に基づいて競売申立てをすることはできないと判示


去年の10月の判決でいまさらの感じが強いのですが,取り上げます。

まるで近時,だされたかのようなタイトルになっていますが,ご了承ください。

 

建物区分所有法に,いわゆる59条競売という制度があり,分譲マンションにおいては,区分所有者の共同の利益に反する行為をしているか,するおそれがある区分所有者がいる場合に,管理組合は,強制的に所有者を変えてしまうことができます。

 

この共同の利益に反する行為には,暴力団が使用しており物騒であるというようなものから,管理費を全然払わないで負担が不公平であるというものまで含まれます。

 

しかし,強制的に所有権を失わせるという日本の法制度上,極めて強力な内容であるために,違憲ではないかという見解もあるところで,要件も極めて厳格になっており,管理組合の多数決の要件が厳しい他,専用の訴訟を提起しないといけないことになっています。

第59条(区分所有権の競売の請求)
第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

 

さて,この訴訟の認容判決が出た後で競売申立てをする前に,被告の区分所有者が区分所有権を譲渡してしまった場合に,そのまま競売できるのかということが問題となった事件で,最高裁判決が出ました。

最高裁判所第三小法廷平成23年10月11日決定 平成23(ク)166 不動産競売申立て一部却下決定に対する抗告棄却決定に対する特別抗告及び許可抗告事件

民事訴訟法の原則から行くと,口頭弁論終結後の承継人には,既判力が及ぶことになりますが,本件はあまりに属人的な要素が強いですし,競売請求訴訟であり判決効をそのまま及ぼしてよい場合とは若干性格が異なることから,問題となったものです。

最高裁は,端的に,特定の区分所有者の行為を原因とするものであることから,本件のような場合には,譲受人に対する競売申立てをすることはできないとしました。

59条競売の特殊性にかんがみた特殊な法理ということになると思います。

 

すると管理組合の側としてはどうすればいいのかということになりますが,処分禁止の仮処分をしておけばいいのはもちろんですが,債権回収とも違うので,しないことがそれほど批判に値しないと思います。

事実,本件は管理費の滞納なのですが,滞納管理費は譲受人が支払う義務を負うので,所有者が随時変わることは管理組合にとっては困らないはずのことなのです。

この判例もその点を根拠にしている節があります。

しかし,実体法上,譲受人に義務があるといっても,そうそう簡単に払ってくれるわけではありません。

改めて法的手続きをしないとはらわない譲受人の場合もあるわけで,そういう点から考えると,一度で解決するように手を打っておくことも管理組合にとっては必要かもしれません。

 

なお,補足意見では,口頭弁論中に譲渡された場合には,訴訟引受が可能という見解が示されているほか,被告が共同利益に反する行為ををやめたとしても,執行異議でしか争えないのは問題であるという問題意識が示されています。

 

59条競売を利用する実際のケースは,暴力団のような極端な場合はむしろ少数で,大半は管理費の滞納だと思われます。すると,管理組合としては,所詮金の問題だということから,それほど急がなくてもいいという価値判断もあるのかもしれませんが,一部の区分所有者が管理費を払わないということが長期化すると,共同体にかなり深刻な事態を招くおそれがあります。そもそも59条競売には補充性が求められているので,ここにこぎつけるまでに相当な時間が経過しているはずです。すると,迅速な一回解決を管理組合でも考えるべきということになるのかもしれません。

本件は,原告となる管理組合側にとって,重い判例だと思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。