最高裁,定款変更反対に基づく反対株主の株式買取請求に係る株式買取価格決定申立てにおいて,会社側が,請求者が株主であることを争った場合には,審理終結までに個別株主通知を要すると判示 また,全部取得条項月種類株式の取得価格決定の申立てをしているという一事をもって,反対株主の株式買取請求ができなくなるわけではないが,全部取得条項に基づく株式取得が発効したら,申立適格を失うとも判示


異常に長いタイトルで申し訳ありません。

少し前の判例なのですが,重要な判示事項の多い判例が出ましたので取り上げます。

最高裁第二小法廷平成24年3月28日決定 平成23年(許)第7号 株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告事件

ナカイ(現ACデコール)が,アクサスの完全子会社となる過程で,全部取得条項付種類株式を使うスキームが例によって行われたのですが,それに伴って,取得価格に不満を持つ株主から,価格決定の申立てが行われたのですが,その株主がそれだけではなく,全部取得条項付種類株式を発行できるようにする際に行った一連の定款変更もとらえて,反対株主による株式買取請求を行って,似た手続きが重複してしまう事態になりました。

さらに,この株主は,個別株主通知をしないうちに,上場廃止によって,振り替え株式でなくなってしまったかったために,適法性が問題となってしまいました。

 

個別株主通知の問題については,メディアクスチェンジ事件で問題となりました。

JAPAN LAW EXPRESS: メディアエクスチェンジ株式価格決定申立事件最高裁決定の概要

要するに,全部取得条項に基づく取得の際に価格決定の申し立てをした場合には,会社が株主であることを争ったなら,審理の終結までに個別株主通知であることをしないといけないというもので,その根拠は,価格決定の申立ては,社債、株式等の振替に関する法律所定の少数株主権行使に該当すると判断されるからでした。

 

本件では,全部取得条項の方ではなく,反対株主の買取請求の方なのですが,最高裁は,解釈の結果,これも少数株主権行使に当たるとしています。

少数株主権行使の点については上記リンク先のメディアエクスチェンジ事件で,細かく書いているので,ご覧ください。

 

すると,本件では,反対株主の買取請求の前に,上場廃止になっており,そもそも個別株主通知が無理ではないかという問題が浮上しました。

最高裁はこれに対しては,株主がその前にやればよいこであるとして,結論を左右しないとしました。

株式買取請求をする株主は,当該株式が上場廃止となって振替機関の取扱いが廃止されることを予測することができ,速やかに個別株主通知の申出をすれば足りる

会社側には他に方法がないのに対して,株主は速やかにやれば足りるではないかということが判断の根拠となっています。

よって,個別株主通知がないので,本件申立ては不適法であるということになりました。

これは,原決定と同じ結論なのですが,原決定は理由は異なっており,原決定は,全部取得条項による取得の方で価格決定の申立てをしており,矛盾しているからとしていました。

最高裁は,この理由付は否定して,価格決定の申し立てと,反対株主の買取請求は背反ではないとしました。

制度の趣旨目的論から,反対株主の買取請求の方は,会社からの退出のためであるので,適正な対価を決めることを目的とする価格決定の申し立てとは両立することを指摘しています。

確かに理論的にはその通りで,原決定もそのようなことは百も承知でしょう。しかし原決定は,実質を見て判断をしたのだと思われます。

これに対して最高裁は,両立はするが,全部取得条項に基づく取得の効果が生じており,もう株主ではなくなったので,申立ての適格を失ったとして,結論は原決定と同じにしたのです。些細な理由の違いにも思えますが,理論的にはその通りであり,より隙のない構成になるので,最高裁の判示はその通りだと思います。

 

すると,価格決定の申立ての方しかないことになりますが,こちらでも個別株主通知を欠いていることは明らかであり,不適法却下の結論になっています。

個別株主通知を怠ると,取得価格についておよそ司法的に争うことが出くなくなるということであり,申立てをする株主側の気を付けるべきことが明確になったといえると思われます。上場廃止前に個別株主通知について手続きをしておくということが必須ということになりそうです。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。