最高裁,仮差押命令は,その被保全債権と異なる異なる債権であっても,請求の基礎を同一にするなら,その実現を保全する効力が及ぶと判示


仮差押命令を得た際の被保全債権が,その後の本案訴訟で否定されてしまい,予備的請求が認容されて確定したという状況下で,当該仮差押に係る債権にさらに差押えがされて配当表が作成されたところ,仮差押債権者がそれに配当異議訴訟を提起した事件がありまして,大変興味深い判示がされましたので取り上げます。

何が問題かというと,仮差押えの被保全債権はないということが本案訴訟で確定しているので,配当異議を言える地位があるのか,訴訟法的には訴えの利益があるのかということです。

最高裁判所第一小法廷 平成24年02月23日判決 平成23(受)268 配当異議事件

被保全債権の不存在が確定しているのなら,仮差押命令の根拠もないわけですから,訴えの利益もないように思えます。

しかし,本件の被保全債権は,貸金債権があるところ,その貸金債権の担保について債務者が担保物を滅失させたことによる不法行為に基づく損害賠償請求権でした。そして本案訴訟で認容された予備的請求というのはこの貸金債権だったのです。

そこで,最高裁は,仮差押命令の効力は,被保全債権と請求の基礎が同一である債権にも及ぶという判断をしました。

仮差押命令は,当該命令に表示された被保全債権と異なる債権についても,これが上記被保全債権と請求の基礎を同一にするものであれば,その実現を保全する効力を有するものと解するのが相当である

そして,本件においては請求の基礎は同一であるので,配当異議訴訟をする訴えの利益はあるとしたのです。

この考え方の根拠として,最高裁は,最判昭和26年10月18日民集5巻11号600頁を引用しています。この事件は,本案起訴命令によって提起された訴訟が仮処分の被保全債権と異なっていた事件で,最高裁は請求の基礎の同一性があるので許されるとした事件でした。

この,請求の基礎の同一性が,仮処分の効力が及ぶ債権の範囲も画することが明らかになったわけです。

もっとも,請求の基礎の同一性の意義は一義的に明らかではありません。

本件では,被保全債権は抵当権があることを前提として,抵当権侵害の不法行為を主張するものでした。そのため抵当権の主張をするために当然のことながら,被担保債権としての貸金債権の存在を主張しているわけで,主張だけ見ると,被保全債権と配当異議訴訟をしている段階での権利は包含関係にあるわけです。こういう場合も請求の基礎の同一性がある場合であるとしたところも重要な判示であるといえると思います。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。