東京地検特捜部,経済産業省幹部を,エルピーダメモリとNECエレクトロニクス(当時)株式のインサイダー取引の容疑で逮捕


経済産業省幹部で前資源エネルギー庁次長の木村雅昭氏をめぐるインサイダー取引疑惑が以前から取りざたされていましたが,さまざまな経緯があったと思いますが,ついに,逮捕という事態になりました。

インサイダー取引容疑、木村経産元審議官を逮捕 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2012年1月12日18時37分  読売新聞)

半導体大手「エルピーダメモリ」(東証1部、東京)など2社の未公表の内部情報を知りながら、両社の株を買い付けた疑いが強まったとして、東京地検特捜部は12日、経済産業省元審議官の木村雅昭容疑者(53)(官房付)を金融商品取引法違反(インサイダー取引)容疑で逮捕した。

(略)

木村容疑者が得た利益は約230万円と過去の例と比べ少額だが、特捜部は政策決定に深く関与した点を重視し、逮捕に踏み切った。木村容疑者側は「増資や合併は報道などで公表済みで、インサイダー取引にあたらない」としている。

報道に依拠すると,木村容疑者の反論は多岐にわたっていますが,以下のようです。

  • 報道済みで公表前ではなかった。
  • 購入したのは妻である

この反論は,インサイダー取引の構成要件に照らすと,どのような位置づけになるのかを整理します。

インサイダー取引規制とは,

  1. 法律に列挙されている人々(類型的に会社の情報を得られる地位にある人々が列挙されています)が
  2. 株価に影響を与える事象として列挙されている重要事実を
  3. 公表前に知っていた場合
  4. 当該会社の株式の取引をしてはいけない

というものです。

したがって,上記の反論は,それぞれ3と1について該当しないといっていることになります。

公表に関しては,エルピーダについては,2009年2月にエルピーダの社長が資本増強策を検討していると記者会見で述べたことがあり,問題とされているエルピーダ株の取引が2009年4月21~27日であることから,公表の方が先であるという主張であるようです。

これに対して,東京地検特捜部は報道によると,

再建計画が固まったのは早くとも社長会見後の同年3月中旬で、重要事実の公表も、政府が産活法の適用を認定した同年6月下旬と判断したとみられる

とされており,見解は真っ向から対立しています。

「公表」の法的意義については,多数のものが知りうる状態になったことと,法定の開示がされたことの二種類があるのですが,前者については,12時間ルールというものがあり,二以上の報道機関が報道してから12時間経過したらという理解がされています。

上記の反論は,あてはめの問題ではなく完全に事実認定の問題ですので,詳細な事実を確認しないといけないので,判断は難しいと思われます。

なお,報道が進んでいくにしたがって,特捜部が逮捕の理由としているのは,改正産活法による公的資金を活用した再建策という重要事実を公表する前の5月中旬、計3千株を買い付けた行為であることが,報道されました。

ですので,どれを重要事実ととらえるかについて,明確な対立があるということになります。

 

これに対して,妻名義であるという点については,かなり間接事実が発見されているようで,報道にもでてきています。

妻名義の計4つの証券口座を使った売買状況も詳細に分析。1口座では前次長が勤務時間中、公用の携帯電話で千株単位で発注するケースが多く、他の3口座の取引は自宅パソコンを使用するなどしており、特捜部は問題の1口座の売買を前次長の取引と特定した。

これらがその通りなら,かなり固い事実で,主体が誰であったかの判断に影響するでしょう。

 

以上から行くと,争点は,再建計画がどのように決まっていって具体的なものになったのはいつの時点であるかという事実に関する問題になると思われます。

 

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。