労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会,65歳まで希望する労働者の雇用を企業に義務づける旨の報告書をまとめる


今月の初めから,企業に65歳までの雇用を義務化する政府の方針が報道されて,若者の就業の機会を奪うことになるなどの批判的トーンの意見や労働組合が賛成していることなどが報道で取り上げられました。

このブログではそれらの動きを取り上げていませんでしたが,この報道に対応する動きが政府側でありましたのでこれを機に取り上げます。

具体的には,労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会が報道で言われていたような内容の報告書をまとめたということです。

今後の高年齢者雇用対策について(案)(PDF:186KB)

上記リンク先は,28日の審議会に提出された案であり,最終的にはこれに経過措置のようなものをつけたようなのですが,議事録はまだ公開されていないので,案の内容が公表されているにとどまっています。

 

案の内容は,希望する労働者には65歳まで雇用することを義務付けるという内容です。

現在は,雇用安定法で再雇用の制度だけ作っておけば足りることになっていますので,これをより進めることになります。

雇用安定法についての説明は以下の記事をご覧ください。

JAPAN LAW EXPRESS: 東京地裁、NTT東日本の60歳定年制を適法と判断

 

この変更は,事実上,現行の雇用安定法9条2項の制度を作っておけば済むとされていることを廃止するのが主眼ですが,雇用義務化だけだと,ドラスティックに過ぎることを懸念してか,雇用と年金を接続するなら,9条2項の基準を継続して利用できるようにする特例を設けることを認めています。どちらにせよ,雇用の維持自体はしないといけないので,ドラスティックであることの緩和にはそれほどならない気もするのですが,使用者が主導して人事を決めることができることになりますので,企業によってはそれなりに意味があるのも確かです。

 

とはいうものの,労働組合の支持母体に持つ民主党政権の下での左寄りの政策の一環であることは否定できないでしょうし,年金の支給開始年齢を遅らせないとどうにもならないことの対処を企業に押し付けるという点もあることは事実です。

しかし,一方で,上記リンク先の記事をご覧いただけるとわかるように,雇用安定法の原則は定年なし又は65歳定年なので,従来から存在していた雇用安定法の本来の目指していた内容をここにきて実現しようという段階を踏んで制度が遷移しているということもできるかもしれません。

 

現実的にどうかというと,再雇用制度がある企業は多いですが,希望者全員を再雇用している企業は,半分であることが上記案に記載されています。私個人の経験でも,再雇用は希望すれば必ず可能というものでは全然なかったので,これを義務付けることは大変な負担となるでしょう。すると必然的に若年層にしわ寄せがいきますし,企業の年齢構成,活気など組織の点でもかなり大きな変化を強いられるのではないかと思います。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。