最高裁,リボルビング方式の貸付にあたり17条書面として交付した書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準じる記載をしない場合には,確定的な記載ができない場合の17条書面の記載すべき内容について判示した平成17年判決の前であっても,貸金業者は悪意の受益者となると判示


長くてわかりにくいタイトルで申し訳ありません。

過払関係で新しい判例が出ました。

 

単純にいってしまいますと,貸金業者と金銭消費貸借契約を締結して,旧法時代のグレーゾーン金利で返済をしていた場合,みなし弁済が有効ではないと,計算しなおして利息制限法を超えていた分については返還を求めることができます。

そして,この返還は不当利得の返還ですので,貸金業者が悪意の受益者であった場合には,利息を付けて返還するべきことになります。

実はみなし弁済が有効ではなかったということは,いわゆる17条書面の記載についての判例で明らかになったのですが,実務は定型的であるためこの判例が出る前も実は有効な17条書面を交付していなかったわけです。

この場合に利息が発生するのかという点ついて,最高裁は,貸金業者が旧貸金業法43条1項(みなし弁済の規定)の適用があると認識し,かつ,その認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合ではない限り,悪意の受益者であると推定されると判示しています(最判平成19年7月13日民集61巻5号1980頁)。

一方,リボルビング払いの貸し付けの場合,その性質上,確定的な返済期間や返済金額を記載することが無理なものです。そこで,上記に述べた17条書面について判例がそのまま妥当しないところなのですが,最高裁はリボルビング払いの場合の17条書面について以下のように判示しました。

最判平成17年12月15日民集第59巻10号2899頁

仮に,当該貸付けに係る契約の性質上,法17条1項所定の事項のうち,確定的な記載が不可能な事項があったとしても,貸金業者は,その事項の記載義務を免れるものではなく,その場合には,当該事項に準じた事項を記載すべき義務があり,同義務を尽くせば,当該事項を記載したものと解すべきであって,17条書面として交付された書面に当該事項に準じた事項の記載がないときは,17条書面の交付があったとは認められず,法43条1項の規定の適用要件を欠く

以上,二件の判例を踏まえると,17条書面に求められる内容をそのままでは,記載することができないリボルビング払いの場合に,この平成17年判決の前に過払が生じていた場合,貸金業者が悪意の受益者であるかは,判例は一応,ブランクであったわけです。

このたび,この点について判例が出まして,この論点について判断が示されました。

最高裁判所第一小法廷平成23年12月01日判決 平成23(受)307不当利得返還請求事件

上記のような判例の展開から行くと,なんとなく結論は想像できますが,平成17年判決の前であっても,17条書面に返済期間と返済金額に準じる内容の記載がない場合には,悪意の受益者の推定を覆す特段の事情があるということはできないとしました。

この理由について,最高裁はいくつか指摘しています。

  • 返済期間,返済金額を記載することを求めた趣旨は,借主が返済計画等を立てることを容易にするためであり,リボルビング払いでも準じる内容を記載することは不可能ではないこと
  • 「準じる」記載をしなくてもみなし弁済の適用があるとの見解が多数とは言えないこと(特に立法に関与した者から明確に示されていたわけではないことを指摘しています)

これらを指摘したうえで,これらの事実があると,監督官庁による通達や事務ガイドラインには,17条書面として求められている内容をすべて記載しなくてもよいと理解しえないではない記載があったとしてもなお,みなし弁済の規定の適用があると認識してもやむを得ないということはできないとしました。

当時の行政は認めていたではないかという反論はつねに出てくるところですが,それを踏まえても,やはり認められないとする構成になっており,従来からの過払判例と同じ論理構成です。

 

以上をわかりやすくまとめますと,リボルビング貸付で,交付される書面に返済期間や返済金額について確定的な記載に準じるような記載(返済の目安となるようなものということになりましょう)がなかった場合,過払金が生じていたら民事法定利率の利息をつけて返還するべきということになります。

他の過払判例とパラレルな結論ですので,当然の結論ということになりますが,意義はそれなりに大きいものといえるでしょう。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。