最高裁,個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者の間の契約が公序良俗に反して無効とされる場合であっても,立替払契約は特段の事情がない限り無効となる余地はないと判示


10月に出ていたものの,取り上げていなかった判例を今になって取り上げます。

 

物を購入するときに信販会社を入れて,購入者が行う支払いは分割で信販会社に対して行うという形になることはよくあります。

その場合,信販会社に対して行う立替払契約は割賦販売法で規制されています。

 

消費者問題となる変な商品を購入させる類型では,支払自体は信販会社に行うようにする形をとることがままあります。

これは,信販業者に対する抗弁の対抗が規定されている以上,抗弁の切断による利益を享受できるというわけではありませんので,販売業者が確実にさきに金銭を手に入れてしまおうという考えからとられていることが多いのだと思われます。

 

さて,抗弁の対抗ができるので,元の売買契約が公序良俗に反して無効であった場合,以降の支払いを拒絶することはできるのですが,それまでに支払った分を不当利得返還請求したという事件で,最高裁判決が出ました。

最高裁判所第三小法廷平成23年10月25日判決 平成21(受)1096 債務不存在確認等請求及び当事者参加事件

 

不当利得返還請求をするには,相手方の利得に法律上の原因がないことが必要ですが,それに該当する主張として,元の売買契約が公序良俗違反で無効であるのだから,立替払契約も無効であるという主張がされたものです。

一見すると,セットの契約なので片方が無効なら,もう一方も無効でよくないかという気がしないでもないですが,契約としては明らかに別物ですし,牽連性を認める法理が特段あるわけでもありませんので,当然には言えないことであるわけです。

最高裁は,当然には立替払契約も引っ張られて無効になるものではないとしました。

その根拠としては,やはり当然には売買契約に生じた事由を対抗することはできず,抗弁の対抗は創設的規定であるので,これに限って認められるものであるという立法の理解を援用しています。

そして,特段の事情がない限り,無効にはならないとしたのですが,その際,特段の事情のメルクマールとなるような判示を行っています。

個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度,販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし,販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はないと解するのが相当である。

 

この判例によると,消費者問題の局面で考えると,ひどいような気がしてきますが,上記のようにあくまで抗弁の対抗はできるわけで,全額の支払を求められるというわけではありません。

また,そもそも消費者契約法5条から,行使の期間制限があるものの信販会社が入っており立替払契約がある場合でも取り消すことができます。

ですので,購入者が消費者である場合には十分対応する手段があるのです。したがって,消費者に不当な場合というのは避けることができる法制度があるので,実質的にはそんなに問題にならないはずであるという実質的な考慮がある判例だといえると思われます。

本件では購入者は消費者で威圧的に購入させられたという事案なのですが,取消権行使をしないでいたために時効消滅してしまったためにこのような法的構成が浮上したという事案でした。

ですのであくまで例外的な事象であることを念頭において,契約は別であるという大原則から判断をしたものといえると思われます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。