オリンパス,損失隠し等をめぐり株主から取締役らと監査役らに対する責任追及の訴えの提訴請求がなされる


オリンパスの一連の事件は,あまりフォローできていませんでしたが,まとめてここで取り上げます。

11月17日と25日の二回に分けて,同社から株主から責任追及の訴えの提訴請求があったことが明らかになりました。

株主からの提訴請求について

株主からの追加の提訴請求について

内容は,平成11年以降の取締役および監査役に対して,問題となっている金融商品による損失の穴埋めと企業買収に関連して善管注意義務があった場合には責任追及の訴えを提起するように求めるものです。

まず調査を求めるかのような請求になっているようですが,善管注意義務があると判断して提訴する場合の請求額については最初から1494億1900万円と明示されています。

この件では,取締役だけではなく,監査役も対象となっています。

そのため,提訴請求の相手方が異なり,錯綜した様相を呈しています。

取締役を訴えるように求めるときは,監査役に提訴請求をして,提訴する場合には,監査役が会社を代表しますが,監査役を訴える場合には,原則に戻って代表取締役が会社を代表するためです。

第386条(監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表) 
第三百四十九条第四項、第三百五十三条及び第三百六十四条の規定にかかわらず、監査役設置会社が取締役(取締役であった者を含む。以下この条において同じ。)に対し、又は取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合には、当該訴えについては、監査役が監査役設置会社を代表する。
2 第三百四十九条第四項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、監査役が監査役設置会社を代表する。
一 監査役設置会社が第八百四十七条第一項の訴えの提起の請求(取締役の責任を追及する訴えの提起の請求に限る。)を受ける場合
二 監査役設置会社が第八百四十九条第三項の訴訟告知(取締役の責任を追及する訴えに係るものに限る。)並びに第八百五十条第二項の規定による通知及び催告(取締役の責任を追及する訴えに係る訴訟における和解に関するものに限る。)を受ける場合

まだ事実が明らかになっておらず,善管注意義務があったか否かはまだ厳密には判断できませんので何とも言えませんが,仮に提訴するとすると,実質的に同一の事件で,取締役と監査役を訴えることになります。

そして,厳密には確認していませんが,実質的に現在の役員等もほぼすべて含まれてしまうことになるでしょうから,取締役に対する訴えと,監査役に対する訴えは攻守を入れ替えるだけで同じことに繰り返すことになりそうです。厳密には監査役の善管注意義務は異なるので,完全に同一というわけではありません。

しかし,訴訟追行において利益相反になるということはいえそうです。そういう場合には,353条などを活用して会社を代表するものを選ぶことになるのかと思うのですが,これは取締役を訴える場合専用の規定です。

第353条(株式会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表)
第三百四十九条第四項の規定にかかわらず、株式会社が取締役(取締役であった者を含む。以下この条において同じ。)に対し、又は取締役が株式会社に対して訴えを提起する場合には、株主総会は、当該訴えについて株式会社を代表する者を定めることができる。

第364条(取締役会設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表)
第三百五十三条に規定する場合には、取締役会は、同条の規定による株主総会の定めがある場合を除き、同条の訴えについて取締役会設置会社を代表する者を定めることができる。

監査役を訴える場合に特別な代表者を選定する規定を欠いているのがいささか問題になるかもしれません。

この場合には,本件事件の当事者となっていない取締役に,364条の趣旨から取締役決議をもって代理権を与える等の方法でで対処することになるのでしょうか。取締役と監査役が同じ事件で責任追及の訴えを起こされるというような状況を考えたことがなかったので,非常に分からないところがあります。

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。