広島高裁,自治体が設けている市議親族企業と自治体の契約を制限する条例を違憲と判断


地方自治体が,当該自治体と市議およびその親族が経営する企業との契約を制限する条例を置いている例がかなり多いと思います。私の住んでいる自治体でもあります。

この規制範囲の親族は,二親等くらいにするのが多いと思います。

この条例の趣旨は,地方議会と自治体との癒着をさけるためのものです。実際,地方議員は,自営業者が多く,土木関係の経営者が多い傾向があります。

これらの人々が地方議員になり,自分の関係する企業に自治体発注の公共事業を持っていこうとしたら大変なことになりますので,条例を設けて規制しているわけです。

しかし,二親等というのはいかにもゆるく,当の議員たちも市議である間は家業から離れることやその他の方策で条例を回避しているのが実情であるようです。

さて,上記に書いたような目的として「議員政治倫理条例」を有している広島県府中市において,この条例の合憲性が争われる訴訟があり,控訴審判決でこの条例が違憲であるとされるという衝撃的な事態が発生しました。

府中市議員倫理条例「無効」 控訴審逆転判決 辞職勧告元市議が勝訴 : 広島 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2011年10月29日  読売新聞)

府中市議会の議員政治倫理条例は違憲で、辞職勧告決議で名誉を傷付けられたとして、元市議の松坂万三郎氏(54)が市を相手取り、約220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、高裁であった。小林正明裁判長は「条例は憲法で保障される経済活動や議員活動の自由を制限しており、無効」とし、請求を棄却した1審・地裁判決を変更、市に33万円の支払いを命じた。

判決では、条例は議員の2親等以内の親族が経営する企業が市と工事などの契約を結んだ場合、議員は企業に契約の辞退届を提出させるよう努めることなどを規定。2008年10月、松坂氏の兄が社長を務める土木建築会社が市発注の道路工事を契約し、議会は条例違反として松坂氏に警告や辞職勧告を決議した。

小林裁判長は「2親等規制は、憲法上保障された経済活動の自由及び議員活動の自由を制限できる合理性や必要性が認められず、無効」と判断した。

(略)

条例はこちら。

○府中市議会議員政治倫理条例

 

この条例では,二親等以内の親族の企業が市と契約したときは,事態をしないといけないとなっており(4条),それをしないときは政治倫理審査会が開催されて,その結果議長は,議会に諮って選択的に措置をとることができるのですが,その中に当該議員に辞職勧告をすることが含まれています。

この事件では,辞職勧告決議を受けた市議が,名誉棄損で慰謝料請求をしている事件のようであり,行政行為を争っているわけではないようです。

広島高裁は,この条例を経済活動の自由と議員活動の自由を制限しているところをとらえて,違憲と判断しました。条例が違憲であるとそれに基づいて取られた措置もまた無効になりますから,根拠にないことを大々的にされたということで慰謝料請求が認められたということになると思います。

全国的に同様の条例があることから影響がかなりありそうです。

判決全文を見ていないので,詳細は分からないのですが,経済的自由の面だけで違憲としたのか,議員活動の自由に対する内容も含んでいるために違憲となったのかが気になるところです。

裁判例情報

広島高裁平成23年10月28日判決

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。