預金口座の差押えには支店名の特定が必要とした最高裁判決の全文が公開される


JAPAN LAW EXPRESS: 最高裁,預金を差押える場合には口座のある支店名の特定が必要と判示で取り上げた最高裁判決の全文が最高裁のウェブサイトで公開されました。

最高裁判所第三小法廷平成23年09月20日決定 平成23(許)34 債権差押命令申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

 

報道だけでは情報不足でしたが,全文に当たってみると趣旨に立ち返っての説得的な記載がされていることがうかがわれました。

支店を特定する必要があるとする理由について,第三債務者が大変であるからということに言及していることは報道からわかっていたのですが,この点について最高裁は以下のように述べています。

差押えの効力は第三債務者への送達の時点で直ちに生じることを指摘したうえで,

差押債権の特定とは,債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,直ちにとはいえないまでも,差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別することができるものでなければならないと解するのが相当

としています。

差押えの効力の発生時点を持ってくるとなると確かに,「できてもいいではないか」的な便宜的議論は厳しいものがあります。

しかし,最高裁の指摘するような効力発生と債権の識別に時間的ロスが生じるようなことが今日の口座管理体制のもとでどこまであるのかはいささか微妙であるようにも思えます。

もっとも補足意見からは,差押えを誤ると金融機関に債務不履行のリスクが生じうるものですから,それをなるべく小さくしておくという観点からもせめて支店くらい特定するべきであるという実務が支持されることが現れているようです。すると形式的な根拠だけではなく,実質的な点からも従来の実務はちょうど良い落としどころであることになりそうです。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。