最高裁,預金を差押える場合には口座のある支店名の特定が必要と判示


条文の問題というよりは,実務の取り扱いの問題なのですが,債権者が債務者の預金を差押える場合(仮差押えの場合も同様です),当該預金の存在する支店名を特定する必要があります。

これは,預金の差し押さえの場合,申立てた裁判所が執行裁判所兼執行機関になって金融機関に送達をしてくれるのですが,その際に送達自体は支店に送るようにしているという実務の取扱に起因するものです。

 

この扱いによって,申立てる債権者側が,ある程度,調査かこの辺にありそうだというあたりをつけておかないといけないという負担を負う構造になっています。

 

今日では名寄せとかがされるくらいですから,本店で一括的に口座を把握しているでしょうから,昔のように支店ごとに別々であるということをそれほど重視しなくてもよいように思えます。

そこで,支店を特定しないで,第三債務者たる金融機関だけを特定して申し立てを行って,金融機関側ですべての支店の口座を探してくれということを求める申し立ての方法がなされ,これが却下されると不服申し立て(執行抗告)をするという例がいくらかみられるようになってきました。

これらの執行抗告に対して,何件かですが,支店名を特定しなくてもよいとする判断が出たことがあり,実務の確立した扱いが一気に流動的になってしまっていました。

このような状況下でこの問題について,許可抗告がされ,最高裁が判断を下した模様です。最高裁のウェブサイトには掲載されておらず,報道されたものです。

日付も22日までに出たとされているだけで具体的には特定されていません。

報道によると,最高裁は,「ある程度速やかに債権を識別できる必要がある」として,この事件では債権者は大手銀行の全支店とゆうちょ銀行のすべての貯金事務センターを対象としていた模様で,「預金の有無などの調査に時間がかかり、その間に利害関係者の地位が不安定になりかねない」として,許されないと判断をした模様です。

 

今日のような電子化がされてもなお,従来通りの実務が支持される根拠として言われていたのは,大手銀行ならともなく地方の金融機関などまでも同じように論じることはできないからなどのことでした。しかし,本件では逆に,規模が大きすぎるために,第三債務者が大変であるということを指摘しているので,これらを併せると,あらゆる場合についてやはり従来通りの実務が支持されるということになりそうです。

 

私の個人的経験では,預金がどこにあるかについてはコツさえつかんで絨毯爆撃のようにすればそれほど難しいものではありません。しかし,問題は支店ごとに押える金額をわりつけないといけないことです。いくらあるかまではなかなかわからないので,その点,全支店を上げることができればあるだけ押えられるということが可能になるため,認められたら助かるという点があります。しかし,認められないということになってしまったので,預金の差し押さえの苦悩はまだ続くことになってしまいました。

しかし,現実のところ,預金の差し押さえをするような段階に至っている場合,預金を見つけても,ほとんど中身がないことが大半です。現実はつらいということをいやに実感させてくれるのが,帰ってきた第三債務者の陳述書を見るときなのですが,これは単なる個人的な感想です。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。