食中毒事件の「焼肉酒家えびす」運営のフーズ・フォーラス,全従業員を解雇するに当たり解雇予告手当を支払わないことを表明


ユッケの食中毒の件は,まだ記憶に新しいですが,その「焼肉酒家えびす」を運営している会社のフーズ・フォーラスが,営業再開を断念した模様で,全従業員を解雇したと報道がなされました。

その解雇は即時の解雇だった模様ですが,その場合だと労働法的には1か月分の賃料相当額の解雇予告手当を支払う必要があります。

しかし,同社は,お金がないから解雇予告手当を支払わないと表明していたことが明らかになりました。

同社の弁護士によると,被害者への弁済を優先したいということが説明されている模様です。

労働基準法

第20条(解雇の予告) 
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
②前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
③前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

第19条(解雇制限) 
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
②前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

条文は上記のようになっていまして,30日前の解雇予告か,30日分の賃金の支払いが必要となります。

しかし,20条1項但書の通りのやむを得ない事由があれば,1か月前の解雇予告または解雇予告手当は必要ありません。

しかし,これは極めて極限的な事情によって事業継続が不可能になった場合か,労働者に帰責事由がある場合であり,しかも行政官庁の認定が必要です(20条3項,19条2項)。

本件が天災などではないですし,ましてや経営難で全労働者を解雇しようとしているのに労働者に帰責事由があるとは到底言えませんし,行政官庁についてもどうなっているのか事実は定かではありませんが,触れられていない以上,該当する事実はないのだと思われます。

すると,本件は解雇予告手当の支払いの必要があり,被害者が出ているという事実はともかく,労働法的には違法な事態であることになりそうです。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。