大相撲の八百長事件で解雇された元力士たちから,処分を不服として何件かの訴訟提起や仮処分申立てがされています。
そのうちの一件の仮処分事件で興味深い解決がされたので取り上げます。
元蒼国来関が申立てていた仮処分事件で,本訴判決で決着をつけるので,判決後に精算することを合意したうえで,1年間の賃金相当額を仮払いするという和解が,9日に東京地裁で成立したことが明らかになりました。
解雇をめぐる労働事件で仮処分事件が活用されることは多く,賃金仮払いが認められることもそれなりにあります。
それらは本案と同様の判断を前倒しでしているという性格を有していることが多いのですが,本件はあくまで和解であり,しかも報道で見る限りでは,解雇の有効性についての判断はあまりしていないようにうかがわれます。
報道ではふれられていませんが,まるで本訴追行の間の労働者の生計維持を主に気にしたかのような感じを受けます。決定で仮払いが認められる例でも,当然,生計についても考慮しているので,この点があったとしても,極めて特徴的だということはできないのですが,和解でこの結論になるというところは興味深く感じました。
ちなみに本訴提起はまだなされておらず,これから行われるとのことです。