最高裁,民事訴訟法38条後段の共同訴訟であって,受訴裁判所がいずれの共同訴訟人に係る部分にも土地管轄を有している場合に,法7条但書によって事物管轄に関する9条の適用が排除されることはないと判示


何を言っているのかわかりにくいタイトルで申し訳ないですが,最高裁が,共同訴訟の土地管轄についての民事訴訟法7条但書は,事物管轄に関する定めである9条に適用されることはないという判示を行いました。

最高裁判所第二小法廷平成23年05月18日決定 平成23(許)4 移送決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

 

事案としては,過払金の請求事件です。

本訴原告(本件では抗告人)が貸金業者三社に対して過払金請求を行った際,どの被告に対しても請求額は140万円にいっていなかったのですが,合算すると140万円を超えるとして,名古屋地方裁判所一宮支部に訴えを提起しました。

これに対して,貸金業者が,本件は,共同訴訟のうち通常共同訴訟でも38条後段の「同種」の方の共同訴訟にあたるとして,7条後段から地方裁判所には管轄が認められないという主張をして移送申立てをしたために生じたのがこの事件です。

第38条(共同訴訟の要件)
訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。

第7条(併合請求における管轄) 
一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで(第六条第三項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。

第9条(併合請求の場合の価額の算定) 
一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。ただし、その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合におけるその各請求については、この限りでない。
2 果実、損害賠償、違約金又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない

要するに,7条但書があるから,9条の訴訟物の価格の合算ができないので,140万円を超えないから,地方裁判所には管轄が生じないという主張でした。

これは,もっともらしく見える主張ですが,7条但書は,ほかの共同被告と何の関係もないのに同種の原因であるために,被告のうちの一人に対して管轄が生じてしまうようなところで訴えを提起されてしまうと大変な負担であるために設けられたものです。

したがって,これは土地管轄をどこにするかという問題であるわけです。これに対して,簡易裁判所か地方裁判所かという問題は事物管轄の問題であるわけで,問題の次元が異なるわけです。

最高裁は,7条,9条がどの管轄についての定めであるかについては以下のように端的に判示しています。

法7条は,法4条から法6条の2までを受けている文理及び条文が置かれた位置に照らし,土地管轄について規定するものであって事物管轄について規定するものではないことが明らか

 

本件では,本訴原告の住所地である名古屋地方裁判所が義務履行地であることから38条後段の共同訴訟ではあるものの,どの被告に対しても土地管轄を有しており,簡易裁判所になるか地方裁判所になるかは土地管轄があるうえでの事物管轄の問題ということになるわけです。

この段階で訴訟物の価格の合算をする9条が問題になるのであり,7条但書の働く余地はないということになります。

こういわれると当然のことに聞こえますが,表面的にとらえてしまうとなかなか難しい問題だと思います。

 

ちなみになぜ貸金業者はこのような反論をして,移送をめぐる問題にして争ったのでしょうか。どこで審理をするにせよ,過払の問題の現状を考えると,この管轄をめぐる問題を持って最終的に請求棄却となることはあまり見込めないように思われますので,意味があるのかがいささか引っかかるところです。

最近の過払金の事件の裁判における被告側の争い方を見ていると,何か浮かんでくるものがあり,中々興味深い問題かもしれません。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “最高裁,民事訴訟法38条後段の共同訴訟であって,受訴裁判所がいずれの共同訴訟人に係る部分にも土地管轄を有している場合に,法7条但書によって事物管轄に関する9条の適用が排除されることはないと判示

  1. 【★最決平23・5・18:移送決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件/平23(許)4】結果:破棄自判

    要旨(by裁判所): 民訴法38条後段の共同訴訟であって,いずれの共同訴訟人に係る部分も受訴裁判所が土地管轄権を有しているものについて,同法7条ただし書により同法9条の適用が排除されることはない http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110523160038.pdf <裁判所ウ……

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