証券取引等監視委員会,ジャストシステム株をめぐりインサイダー取引の疑いがあるとして同社とアドバイザー契約を結んでいた人物から情報を得たコンサルタント会社社長を調査


2009年のことになりますが,一太郎などのソフトで有名なジャストシステムが業務提携を行い当該相手先に第三者割当増資をしましたが,その間に同社の株価は上昇しました。

この事実を公表前に聞きつけて,同社株の売買を行って利益を得たというインサイダー取引の疑いがコンサルタント会社の社長にあることがわかり,証券取引等監視委員会が調査をしていることが報道されました。

この社長は,ジャストシステムとは関係ない人物ですが,当該情報をジャストシステムとアドバイザー契約をしている人物から知ったらしく,情報の一次受領者ということでインサイダー取引の構成要件に該当すると判断されているものと考えられます。

インサイダー取引について定めている金融商品取引法の条文は以下の通りです。

第166条(会社関係者の禁止行為) 
次の各号に掲げる者(以下この条において「会社関係者」という。)であつて、上場会社等に係る業務等に関する重要事実(当該上場会社等の子会社に係る会社関係者(当該上場会社等に係る会社関係者に該当する者を除く。)については、当該子会社の業務等に関する重要事実であつて、次項第五号から第八号までに規定するものに限る。以下同じ。)を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け又はデリバティブ取引(以下この条において「売買等」という。)をしてはならない。当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を次の各号に定めるところにより知つた会社関係者であつて、当該各号に掲げる会社関係者でなくなつた後一年以内のものについても、同様とする。
一 当該上場会社等(当該上場会社等の親会社及び子会社を含む。以下この項において同じ。)の役員(会計参与が法人であるときは、その社員)、代理人、使用人その他の従業者(以下この条及び次条において「役員等」という。) その者の職務に関し知つたとき。
二 当該上場会社等の会社法第四百三十三条第一項に定める権利を有する株主若しくは優先出資法に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者又は同条第三項に定める権利を有する社員(これらの株主、普通出資者又は社員が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条及び次条において同じ。)であるときはその役員等を、これらの株主、普通出資者又は社員が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 当該権利の行使に関し知つたとき。
三 当該上場会社等に対する法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知つたとき。
四 当該上場会社等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者(その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。)であつて、当該上場会社等の役員等以外のもの 当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知つたとき。
五 第二号又は前号に掲げる者であつて法人であるものの役員等(その者が役員等である当該法人の他の役員等が、それぞれ第二号又は前号に定めるところにより当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知つた場合におけるその者に限る。) その者の職務に関し知つたとき。

(略)

3 会社関係者(第一項後段に規定する者を含む。以下この項において同じ。)から当該会社関係者が第一項各号に定めるところにより知つた同項に規定する業務等に関する重要事実の伝達を受けた者(同項各号に掲げる者であつて、当該各号に定めるところにより当該業務等に関する重要事実を知つたものを除く。)又は職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をしてはならない。

悪文の見本のような条文で,何を言っているのかさっぱりわからない感じがしますが,簡単に言いますと,インサイダー取引規制とは,内部者(役員・従業員や主要株主)・準内部者(法令上の権限を有する者・契約関係にあるもの)・情報受領者(上記二者から情報の伝達を受けた者)・一次受領者(前三者から情報の伝達を受けた者)が,重要事実を知った場合には,公表後まで株の売買をしてはいけないという規制です。

際限なく規制するわけにいかないので,内部者からの一次受領者までに限っていますが,もっと広げるべきではないかという立法論も昨今出てきています。

さて,本件では容疑の事実は,当該アドバイザーを契約上の地位にあるのですが,その契約に関して知った場合は準内部者であるので件の社長は情報受領者になりますし,契約とは関係なくジャストシステムの内部との人間関係ができていることから知ったのだとすると,情報受領者ということになり社長は一次受領者になるわけで,いずれにせよ規制対象に該当することになります。

いまだに容疑の段階なので,この事実を立法論等にフィードバックするのは尚早ですが,仮に事実とするとこれを従来の規制でも捕捉できているととらえるべきなのか,同社とは関係ないものが取引をしているという点を重視するべきなのか,評価は難しいような気がします。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。