東証一部上場のマルカキカイの部長兼執行役員の死亡をめぐり,遺族が労災の申請をしたところ,労働基準監督署が労働者性を否定して不支給処分がなされたために,取消訴訟が提起されました。
この裁判で,東京地裁は,当該執行役員を労働者に当たるとして,不支給処分を取り消しました。
報道によると,執行役員になっても従業員の時と労働の実態が変わっていないことと,経営会議に出席はしていても最終的な決定は取締役会でしていたことを指摘して,労働者性を認めている模様です。
しかし,原告がどのような訴訟を提起していたのかはわからないのですが,支給を義務付けたわけではなく,取り消しただけのようで,業務起因性について再度,行政庁の判断が待たれることになるようです。
本件判決は労災保険法の労働者についての判示ですが,労災保険法上の労働者は,労基法上の労働者と同一であるとされています。したがって,執行役員であっても,事実関係によっては労働基準法および労働契約法上の労働者に該当することが認められたということになります。この点では意義深い判決だと思われます。
しかし,よくよく考えると,執行役員というのは非常に融通無碍な使い方をされており,従業員の最上位クラスに相当する例もあります。したがって,当然に労働者である執行役員というのは想起されるのであり,本件はそれを正面から認めたという点に意義があるのだと思われます。
裁判例情報
東京地裁平成23年5月19日判決