メディアエクスチェンジ株式価格決定申立事件最高裁決定の概要


最近,ここブログでかなり前の判例を取り上げることが相次いでおり,混乱させて申し訳ありません。

今回は,昨年12月に出たメディアエクスチェンジ株式価格決定申立事件を取り上げます。

この事件は大きな注目を集めまして,すでに詳細な論考がたくさん出ております。今更このブログで取り上げる意義はほとんどありませんが,記録の網羅性の観点から,載せないわけにはいかないだろうと考えまして,簡単にまとめた記事を掲載させていただきます。

最判平成22年12月7日民集64巻8号2003頁

争点となったのは,全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申し立てを裁判所にした場合に,申立ての相手方が申立人が株主であることを争った場合に申立人はどのような行為が必要か,または必要ではないかという点です。

第172条(裁判所に対する価格の決定の申立て) 
前条第一項各号に掲げる事項を定めた場合には、次に掲げる株主は、同項の株主総会の日から二十日以内に、裁判所に対し、株式会社による全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てをすることができる。
一 当該株主総会に先立って当該株式会社による全部取得条項付種類株式の取得に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該取得に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
2 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する取得日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。

株式譲渡を会社に対抗するには,会社法上の原則は,株主名簿の記載ということになります(130条2項)が,これは株券発行会社の場合ということになります。

振替株式の場合には,社債等振替法の規定から,少数株主権の行使には,いわゆる個別株主通知が必要とされています。これが,全部取得条項の価格決定の申立てにも適用があるのかという問題になるわけです。

社債、株式等の振替に関する法律

第154条(少数株主権等の行使に関する会社法の特例)
振替株式についての少数株主権等の行使については、会社法第百三十条第一項の規定は、適用しない。
2 前項の振替株式についての少数株主権等は、次項の通知がされた後政令で定める期間が経過する日までの間でなければ、行使することができない
3 振替機関は、特定の銘柄の振替株式について自己又は下位機関の加入者からの申出があった場合には、遅滞なく、当該振替株式の発行者に対し、当該加入者の氏名又は名称及び住所並びに次に掲げる事項その他主務省令で定める事項の通知をしなければならない。
一 当該加入者の口座の保有欄に記載又は記録がされた当該振替株式(当該加入者が第百五十一条第二項第一号の申出をしたものを除く。)の数及びその数に係る第百二十九条第三項第六号に掲げる事項
二 当該加入者が他の加入者の口座における特別株主である場合には、当該口座の保有欄に記載又は記録がされた当該振替株式のうち当該特別株主についてのものの数及びその数に係る第百二十九条第三項第六号に掲げる事項
三 当該加入者が他の加入者の口座の質権欄に株主として記載又は記録がされた者である場合には、当該質権欄に記載又は記録がされた当該振替株式のうち当該株主についてのものの数及びその数に係る第百二十九条第三項第六号に掲げる事項
4 加入者は、前項の申出をするには、その直近上位機関を経由してしなければならない。
5 第百五十一条第五項及び第六項の規定は、第三項の通知について準用する。この場合において、同条第六項中「第三項及び前項」とあるのは、「前項」と読み替えるものとする。

原決定は,年に2回,会社に対して行われる総株主通知で十分という考えを示しました。

しかし,最高裁は,全部取得条項の買取価格決定の申し立ては少数株主権に当たるということから,個別株主通知が必要であるとしました。しかし,すると,個別株主通知には時間がかかるので,権利行使がおよそできなくなりかねないため,相手方が株主であることを争った場合に,審理終結までに個別株主通知がされれば足りるとしました。

上記の社債等振替法154条で個別株主通知を要するとされているのは,少数株主権等を行使する場合ですが,この少数株主権等の定義は,同法147条4項にあります。

第147条(振替機関の超過記載又は記録に係る義務の不履行の場合における取扱い)

4 振替機関が第百四十五条第三項の義務の全部を履行したときは、株主の権利(会社法第百二十四条第一項に規定する権利を除く。次条第四項及び第百五十四条において「少数株主権等」という。)の行使については、第一項の規定は、適用しない。

この規定の仕方から行くと,会社法124条は基準日の規定ですので,基準日の株主が一斉に行使できるような権利以外を少数株主権等といっていることになります。本件の価格決定申立ては,基準日ではなく,その時点の株主が行使できるものですので,少数株主権等に該当するということはその通りでしょう。

したがって,解釈論としてはその通りでしょうが,すると実際問題として不都合があるので,時期的に緩やかにすることで,妥当な解決を図ったというのはこの決定ということになります。その通りだとは思いますが,このようなことを言えるのは最高裁だからであり,破棄された原決定も現実の問題に配慮して解決を図ろうとした点で同じ方向を向いていたものだ思います。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。