最高裁,企業価値を毀損する株式交換が行われた場合の株式買取請求権行使にかかる公正な価格も,株式買取請求が行われた日における「ナカリセバ」価格であると判示 株式交換効力発生日前1か月間の株価を回帰分析をして補正したものの平均値をとった原決定を破棄


株式買取請求権についての判例を連続して取り上げます。

こちらはインテリジェンスの株式をめぐるものです。

インテリジェンスの件については,以前このブログで和解が成立したことをお伝えしていますが,これは一部のみの株主についてのものである模様です。もっとも,本件の審級を通じての当事者に変更がないようですので,実際どうなのかは確認できていません。

 

最高裁判所第三小法廷 平成23年04月26日決定 平成22(許)47 株式買取価格決定に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件

 

本件は,USENが株式交換でインテリジェンスを完全子会社としたという組織再編における株式買取請求権行使のうち,インテリジェンス株主によるものの事件です。よって,消滅会社側ということになりますので,適用される条文等は楽天対TBS事件のそれと同じになります。

 

本件が楽天対TBS事件と異なる点は,この株式交換によってインテリジェンスの会社価値が毀損されたということが認定されている点です。

この場合,シナジーの分配ということは当然おきません。

楽天対TBS事件で示された公正な価格の意義は,「シナジーその他の企業価値の増加が生じない場合」には,原則として「当該株式買取請求がされた日における,同項所定の吸収合併契約等を承認する旨の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格(以下「ナカリセバ価格」という。)をいうものと解するのが相当である」としているので,この判示が妥当する場合であるわけです。

したがって,株式買取請求権行使日を基準とするべきところ,原決定は株式交換の効力発生日を基準として,回帰分析をして補正した基準日前1か月の株価の平均を採用したため,誤りがあるとして,原決定破棄差し戻しという結論になりました。

 

すると,基準日に関する点のみで差し戻していることになりますが,企業価値に毀損がある場合の公正な価格についてはどうなるのでしょうか。

実は原々決定は回帰分析を用いることを否定していたのに,原決定は回帰分析を採用して,公正な価格が大きく下がったという経緯がありました。

最高裁は,「なお」として,以下のように述べています。

株式交換を行う旨の公表等がされる前の市場株価を参照することや,上記公表等がされた後株式買取請求がされた日までの間に当該吸収合併等以外の市場の一般的な価格変動要因により,当該株式の市場株価が変動している場合に,これを踏まえて参照した株価に補正を加えるなどして同日のナカリセバ価格を算定することは,裁判所の合理的な裁量の範囲内にあるものというべきである

これは果たして,どちらの算定を是とするものなのかよくわからないのですが,回帰分析によっても合理的な裁量の範囲内だとということになりそうにも読めます。

最高裁は原決定の基準日については否定していますが,回帰分析など計算方法については是認するのだとすると,株式買取請求権行使は効力発生日の20日前から前日までに行われますので,結果としては原決定の結論とそれほど大きな違いにはならないように思われます(実際に計算しているわけではありませんのでこの点については誤りがあるかもしれません)。

差戻し後の判断がどうなるのかが注目されます。

 

ちなみに本決定とは関係ないのですが,本件の原々決定は併合された事件で,株主が申立人になっているものと会社が申立人になって別の株主を相手方としたものが併合されていました。

価格決定の申し立ては会社側からもできるということがわかり,興味深いところです(786条2項)。

第786条(株式の価格の決定等) 
(略)

2 株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は消滅株式会社等は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。