最高裁,楽天対TBS事件で,シナジーその他の企業価値の増加が生じない場合の株式買取請求権行使にかかる価格決定申立てにおける「公正な価格」は,株式買取請求がされた日における「ナカリセバ」価格であると判示


組織再編等が行われて反対株主から株式買取請求権行使がされたものの,価格について会社と合意できなかった場合には,裁判所に価格決定の申し立てをして,価格を決めてもらうことになります。

その際,公正な価格に決することになるのですが,その算定の方法について,最高裁が一部判断をしたという重要な判決が出ましたので取り上げます。

事案は,このブログでも何度も取り上げてきており,世間的にも大変著名な,楽天がTBSを買収しようとしたものの果たせずに退出するにあたって株式買取請求権を行使して価格決定申立てに至った事件です。

最高裁判所第三小法廷平成23年04月19日決定 平成22(許)30 株式買取価格決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

 

まず条文の確認です。

そもそも申立てたのは楽天ですが,その相手方は,放送事業を会社分割で分割したので,適用される条文は,消滅会社側の規定になります。

第785条(反対株主の株式買取請求)
吸収合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
一 第七百八十三条第二項に規定する場合
二 前条第三項に規定する場合
2 前項に規定する「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主(第七百八十三条第四項に規定する場合における同項に規定する持分等の割当てを受ける株主を除く。)をいう。
一 吸収合併等をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合 次に掲げる株主
イ 当該株主総会に先立って当該吸収合併等に反対する旨を当該消滅株式会社等に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該吸収合併等に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主
二 前号に規定する場合以外の場合 すべての株主
3 消滅株式会社等は、効力発生日の二十日前までに、その株主(第七百八十三条第四項に規定する場合における同項に規定する持分等の割当てを受ける株主を除く。)に対し、吸収合併等をする旨並びに存続会社等の商号及び住所を通知しなければならない。ただし、第一項各号に掲げる場合は、この限りでない。
4 次に掲げる場合には、前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
一 消滅株式会社等が公開会社である場合
二 消滅株式会社等が第七百八十三条第一項の株主総会の決議によって吸収合併契約等の承認を受けた場合
5 第一項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。
6 株式買取請求をした株主は、消滅株式会社等の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。

第786条(株式の価格の決定等) 
株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と消滅株式会社等(吸収合併をする場合における効力発生日後にあっては、吸収合併存続会社。以下この条において同じ。)との間に協議が調ったときは、消滅株式会社等は、効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。
2 株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は消滅株式会社等は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。
3 前条第六項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。
4 消滅株式会社等は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。
5 株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日(吸収分割をする場合にあっては、当該株式の代金の支払の時)に、その効力を生ずる。
6 株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

 

原決定は,公正な価格の意義とその算定の基準日について,それぞれ以下のように判示していました。

公正な価格:吸収分割契約を承認する旨の株主総会の決議がなかったとしたらその株式が有していたであろう価格

基準日:株式買取請求期間の満了日

その上で買取期間満了日の終値である1,294円としました。

 

最高裁は判断するに当たり,原審の確定した事実関係を引用してますが,以下にも言及があります。

本件吸収分割により相手方の事業がAに承継されても,シナジー(組織再編による相乗効果)は生じず,また,本件吸収分割は,相手方の企業価値や株主価値を毀損するものではなく,相手方の株式の価値に変動をもたらすものでもなかった。

 

TBSが行った認定持株会社になる組織変更は,シナジーはなく,逆に会社の価値を棄損するものでもないということに言及しています。

その上で,株式買取請求権の制度趣旨について,二点の意義を確認しています。

  • 退出する株主に組織再編等が行われなかった場合と経済的に同等の状況を確保する
  • 組織再編等によってシナジー損他の企業価値の増加が生じる場合にはこれを適切に配分すること

このことから,裁判所の合理的な裁量にゆだねられているとしています。

 

その上で,本件では上記認定の通り,企業価値の増加がないことから,

吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格(以下「ナカリセバ価格」という。)を算定し,これをもって「公正な価格」を定めるべきである。

としました。

上記の通りの制度趣旨から,この帰結は導けるところですが,その基準日について,最高裁は,株式

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。