最高裁,新国立劇場と基本出演契約を締結したうえで各公演ごとに個別出演契約を締結する方式で公演に出演していたオペラ合唱団員を労働組合法上の労働者と認定


さる12日に労組法上の労働者について二件,最高裁判例が出ました。

どちらも労組法上の労働者であると認めたのですが,そのうちの一件が,新国立劇場のオペラ合唱団員の事件です。

最高裁判所第三小法廷 平成23年04月12日判決 平成21(行ヒ)226 不当労働行為救済命令取消請求事件

新国立劇場のオペラ公演の出演する合唱団員は,1年ごとに試聴会という試験を行い,契約メンバーと登録メンバーを選抜して,契約メンバーが主として出演して,足りない場合に登録メンバーが出演するという方法で公演を行っているそうです。

過去4年間,試聴会の結果,契約メンバーとなっていた合唱団員Aが平成15年の試聴会の結果,不合格となったことから,音楽家等が個人加盟している労働組合である日本音楽家ユニオン団体交渉が,「Aの次期シーズンの契約について」を議題として団体交渉の申し入れをしたところ,雇用関係がないとして拒否されたために,東京都労働委員会に救済命令の申し立てを申し立てたという事件です。

都労委は,不合格措置については不当労働行為ではないとしつつも,団交拒否は不当労働行為であるとして救済命令を出して,新国立劇場側と日本音楽家ユニオンの双方が中労委に再審査を申して立てていましたが,棄却されており,取消訴訟が提起されたものです。

したがって,当事者は,財団法人新国立劇場運営財団,日本音楽家ユニオン,中央労働委員会の三者です。

 

労組法上の労働者とは,労組法3条で条文上は賃金などの収入で生活する者(退職者、解雇されたものなど含む)となっているのですが,これは,使用従属関係のことであると解釈されています。

この使用従属関係の要素としては,

  • 事業遂行に不可欠な労働力としての企業組織への組み入れ
  • 契約内容の一方的決定
  • 業務遂行の日時・場所・方法等に関する指揮監督
  • 業務に関する諾否の自由の不存在

などが指摘されています。

本件の新国立劇場のシステムでは以下のような特徴があり,最高裁はこれらから,労組法上の労働者性を肯定して,これを否定していた原審を破棄しました。

  • 契約メンバーが実際の運用では原則的に全公演に出演することが求められていたこと
  • 公演の件数などは財団が一方的に決定していたこと
  • 財団の選定する指揮者等の監督を受けていたこと
  • 公演及び稽古に参加した場合に応じて,報酬等一覧に掲げる単価および計算方法に基づいて算定された報酬を受けていたこと
  • 予定された時間を超えた場合には超過手当も払われていたこと

以上の事情は,どれも上記に示した要素につながるものであり,従来からの判断枠組みに従って判断されたものといえましょう。

これらの事情から行くと確かに労働組合法上の労働者と評価するのが妥当なところです。

こうして,労組法上の労働者であることが確定しましたので,不合格措置と団交拒否が不当労働行為に当たるかについて判断するために原審に差し戻されています。

したがって,争いはまだまだ続きます。

歌唱能力を判断して不合格にしたとされている措置が不当労働行為に該当するということを主張するのは,単純に考えるとなかなか大変である様に思われます。

一方で義務的断行事項には該当しそうですので,こちらについては見通しがつきやすいかと思えますが,それでもやや引っかかるものがあります。

というのは,労働組合はよく特定の労働者の件として,団交の議題としてきます。特定の人事は不服申立制度が完備されていないなら義務的団交事項になりますからまあいいのかもしれませんが,特定人事を上げるから余計に争いになる点がある様に思われます。

このような問題設定をするのは,意思を示す的な意味合いがあるのでしょうが,実際の労働者のためを考えるとどうなのでしょうか。

 

 

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “最高裁,新国立劇場と基本出演契約を締結したうえで各公演ごとに個別出演契約を締結する方式で公演に出演していたオペラ合唱団員を労働組合法上の労働者と認定

  1. 【★最判平23・4・12:不当労働行為救済命令取消請求事件/平21(行ヒ)226】結果:破棄差戻し

    要旨(by裁判所): 年間を通して多数のオペラ公演を主催する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結した上,各公演ごとに個別公演出演契約を締結して公演に出演していた合唱団員が,上記法人との関係において労働組合法上の労働者に当たるとされた事例 http://w…

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