ヤマト運輸、郵政公社を独禁法違反で提訴


宅配便最大手のヤマト運輸が、10月1日から日本郵政公社が始めるゆうパックの新割引制度を費用を下回る価格でサービスを提供する不当廉売であるとするなど数点の根拠を挙げて、28日、郵政公社を独禁法24条にもとづいて提訴しました。記事はこちら。これに対する郵政公社の見解はこちら
独禁法のエンフォースメントには公取委の活動以外に私人が独禁法違反行為をしている当事者を訴える民事訴訟制度もあり、そのうち独禁法24条に差止請求という制度があります。
24条は独禁法違反行為類型のうち不公正な取引方法のみを差止請求の対象としており、訴えることができるのは、当該不公正な取引方法で損害を受け、しかもそれが著しい者です。
ヤマトが主張の概略は以下です。
・ゆうパックの新しい割引は費用を下回る価格なので不当廉売である。
・ポスタルローソンの賃料が市価より安く設定したこととローソンに設置したポストから公社が郵便物を無料回収することで公社がローソンに不当な利益を提供、それによってローソンにおいてゆうパックの取り扱いを実現したのは不公正な取引方法である。
この提訴について、日経の解説では、日大の野木村忠邦教授が、ヤマトのシェアのほうが大きいので公社を独禁法違反に問えるかはかなり難しいということを述べておられます。
独禁法違反かどうかを考えるにおいてシェアが重要な要素ですが、シェアが小さくても影響力が絶大であることはあるので、シェアだけ見て独禁法違反ではないというのはあまりに浅慮です。
ただ、記事では誤解を招くような表現になっていましたが野木村教授は、以下のような点を考慮に入れたのかもしれません。
上記にも書いたように、独禁法24条の差止請求は、不公正な取引方法に該当した上でさらに原告が「著しい」損害を受ける場合でなければ、提訴できないとしています。
ヤマトが公社によって受ける損害はシェアから考えれば著しいとはいえないとして、訴えが認められないということもありうる構成になっているので、その点を踏まえての解説かもしれません。
ただ、記事の文言は独禁法違反の要件がシェアが大きいことであるようになっていました。
以上のような点からわかるように、「著しい」が入っていたり、なぜか不公正な取引方法だけに限っていたりと、独禁法の24条はかなり使いづらい条文で、これに依拠して訴えるのにはかなりの困難がありそうです。
学者の中には、このような制限を課しているのを評価する見解のほうが多いのですが、不思議な話です。
そんな不備のある制度ですが、ヤマトは社会的な議論を高めるためにも、あえて訴えたのでしょう。
様々な問題が自己抑制せず、司法の場に出るようになったのは、法の支配の観点から見ていいことです。
ただ、かなり政治的な問題でもあるので、終局判決まで行かず解決の方向に向かう可能性もかなり高いです。
今後に要注意といえます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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