最高裁,夫と自然的血縁関係がないものの法律的親子関係が確定した子を監護する妻から夫に対する監護費用の請求を権利濫用と判断


わかりにくいタイトルで申し訳ありません。

日常的な用語を用いて端的に言うと,夫以外の男性との間に設けた子がいる妻が,そのことを秘密にして,その後かなり経過してから,夫の不貞行為をきっかけにして婚姻が破たんしての離婚の訴えに際して,その子の分まで監護費用を請求した事件で,最高裁はこれを権利濫用として,その子の分までは監護費用の請求を認めませんでした。

最高裁判所第二小法廷平成23年03月18日判決 平成21(受)332 離婚等請求本訴,同反訴事件

 

素朴な感情としては,自分の子ではない子の監護費用をなぜ請求されないといけないのかという疑問をお持ちになるのが当然だと思いますが,民法では,養育する義務などが生じる親子関係というのは,生物的な血縁関係とは関係なく,法的に決まってしまうものです。

そのため実は隠し子でも,法的には親子になってしまうことはあります。その辺は家族法の基本的な点なのですが,説明が後日に譲ります。

そういうことを前提として,法的には自分の子であることを否定できなくなってしまった夫に対して妻が,夫以外の男性との子の分まで監護費用を請求するのは権利濫用とされたわけです。

権利濫用についての新しい判断類型であるといえると思います。

しかし,法的には親子だが生物学的には親子ではない場合をすべからく含めるほどこの判決は広い判示をしていません。

本件の事実関係に照らして,夫が気づかず法的親子関係があらそれなくなってしまうことに夫にやむを得ない事実がかなりあるため,それを考慮していることを明らかにしています。また,夫が婚姻背迂闊破たん後もかなりの財産的給付をしてきたことも言及しています。

これらに言及しているのは,上記のような法的親子関係を民法が設定していることの理由である子の福祉のためということと同じ理由からでしょう。

 

余談ですが,この本件の判断はともかくとして,なぜこの夫は親子関係が争えなくなってしまったのでしょうか。

本件判決では,夫の提起した親子関係不存在確認が却下されてそれが確定したとされています。

具体的事実はよくわからないので何とも言えないのですが,妻が夫以外の男性との間の子を懐妊したのは,夫と同居している間の出来事であるなど夫との間でも外観上懐胎が不可能な場合ではないのかもしれません。そこで判例は外観説に立っているためにそこから,親子関係不存在確認ができる推定されない嫡出子の場合ではないとされてしまったのかもしれません。

だとすると,DNA鑑定など科学的な方法でいくらでも推定されない嫡出子を拡大できそうな今日でも,確立した判例の立場を形式的に適用した不当さがこの判断の前にはあったかもしれません。

だとすると,そちらの方がかなり問題かもしれません。

以上の記述は根拠のない単なる憶測した事実に法的検討を加えただけですので,その旨ご了解ください。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。