整理回収機構が朝鮮総連本部の土地建物から債権を回収するために差し押さえをしようとして,さまざまな法的手続きが取られてきたことはこのブログでも,いくつか取り上げてきました。
簡単にこれまでの流れをまとめますと以下のようになります。
まず,破たんした旧朝銀東京信組などから朝鮮総連に対する融資が認定され,それを引き継いでいる整理回収機構は朝鮮総連に対する債権者であることが確定しました。
そこで,債権回収のための強制執行ということになり,整理回収機構が朝鮮総連の本部がある土地建物を差し押さえようとしたところ,朝鮮総連は権利能力なき社団であるために代表者名義になっているはずのところ,関連団体に登記が移っていました。
そこで,朝鮮総連に対する債務名義で関連団体に対して執行することができるかという問題になったのですが,これは認められませんでした。
しかし,並行して整理回収機構は朝鮮総連の代表者に登記名義を戻す訴訟をしており,こちらは現在上告中ですが,控訴審までは認められています。
そのような状況下で,整理回収機構は朝鮮総連本部の土地建物に対して仮差押えをしたことが明らかになりました。
朝鮮総連本部、整理回収機構が仮差し押さえ : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2011年2月25日09時00分 読売新聞)
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部(東京都千代田区)の土地・建物について、東京地裁が18日付で整理回収機構(東京)による仮差し押さえを認める決定を出し、同機構が21日に仮差し押さえを行っていたことがわかった。
(略)
朝鮮総連側は現在、最高裁に上告中で、判決が確定すれば強制執行が可能となる。仮差し押さえは、強制執行に備えて債務者の財産を保全する手続きで、同機構は「念のための保全措置として、仮差し押さえを行った」としている。
仮差押えであり,仮処分ではないことから,金銭債権を被保全債権としていることがわかります。したがって,名義を朝鮮総連の代表者に移すためではなく,強制執行に備えていることになります。
民事保全法
第20条(仮差押命令の必要性)
仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる。
すでに確定している朝鮮総連への債権が被保全債権となっていることがわかります。
上記のような執行力の拡張が認められるかという問題とは違い,法的争点があるようなものではありませんが,民事執行保全の手続きがうかがわれる事例で興味深いです。