会社分割を詐害行為取消権に基づいて取り消した東京高裁判決の検討


ここのところ日経の記事などで濫用的会社分割について問題とする論考が相次いでおり,商事法務1924号では神作教授の論文が掲載されました。これらの論考では,濫用的会社分割とされるものに対して何らかの対処を裁判所や行ったものを取り上げていますが,そのうちの一つに東京高裁平成22年10月27日判決があります。

このブログでは東京高裁判決が出た直後にJAPAN LAW EXPRESS: 東京高裁、新設分割会社の債権者が詐害行為取消権に基づいて会社分割の取消等を求めていた裁判で、会社分割の取消を認めて現物返還の代わりの価格賠償を認めた原判決を支持して控訴を棄却の記事で,この判決を取り上げていたのですが,あまりに直後過ぎて,判決文をまだ入手できておらず,控訴棄却であることから第一審判決でも意味があるだろうとして,これを検討しました。

 

現在では判決全文を見ることができるようになっていますので,論考が相次いでいる機会をとらえて控訴審判決を簡単に取り上げてみたいと思います。

東京高裁平成22年10月27日金融法務事情1910号77頁

実はこの判決は大変短いもので,第一審判決をほぼ是認しているというものです。

会社法的には一番問題となる,組織法上の行為について詐害行為取消権の対象としてよいのかという問題については,東京高裁は以下のように判示しています。

(3)控訴人らは、新設分割につき、会社法は新設分割無効の訴えを定めており、新設分割設立会社を詐害行為取消権の対象とすることはできない旨主張する。
しかし、前記引用に係る原判決中「第3 当裁判所の判断」の3の(3)及び(4)に説示のとおり、新設分割無効の訴えと詐害行為取消権は要件及び効果を異にする別個の制度であり、新設分割無効の訴えの制度があること、あるいは新設分割による新設分割設立会社に新たな法律関係が生じていることなどによって、新設分割により害される債権者の詐害行為取消権の行使が妨げられると解すべき根拠はない。
したがって、控訴人らの上記主張は、採用することができない。

法人格の扱いがあるためにある意味公法的な制度となっている組織法の問題と純粋に財産の問題について相対効しかない詐害行為取消権で取り扱うことは抵触しないという第一審判決のとった考えを東京高裁も是認していることがわかります。

もっともに思えますが,果たしてそれでいいのかいささか疑問の余地があることは従前の記事で書いた通りです。

しかしこの事件は確定してしまいましたので,最高裁の判断を聞くという機会は失われてしまいました。

私見ではこの判決の手法は,かなりゴリ押しの感じがあるのですが,神作教授の論文をはじめとして議論がいろいろ出てきていますので,それらを検討させていただくとまた新たな考えが出てくるかもしれません。とにかくこのようなことは裁判所だからこそいえる話だと思います。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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