最高裁,給付訴訟においてはその権利を有すると主張する者に原告適格があると判示


「何を当たり前のことを」と思われるかもしれないタイトルになっていますが,実際に考えてみるとなかなか難しい判例が出ましたので,取り上げます。

とあるマンション管理組合が,規約で共用部分を勝手に改造した区分所有者に対して違約金の支払いを求められるように定めなど,管理組合自体がいろいろと共用部分についての権利がある旨を定めていたところ,そこで定められている通りの共用部分の無断改造などが行われたとして,規約所定の権利を訴訟物として撤去や損害賠償などを請求した訴訟が提起されました。

第一審は,これについて一部認容をしたのですが,原審である東京高裁は,一転,訴えを却下しました。

その理由は,共用部分に関する権利は各区分所有者に属するので,マンション管理組合には当事者適格(原告適格)がないとして,訴訟要件を欠くので却下したものでした。

この事件は,マンションについて管理組合がどこまで訴訟できるかという問題のように見えますので,訴訟担当に関する問題とすると,原判決はもっともではないかと思えてきます。

しかし,最高裁はこれは誤りであるとして,破棄差し戻しをしました。

最高裁判所第三小法廷平成23年02月15日判決 平成21(受)627 損害賠償等請求事件

最高裁は以下のように述べています。

給付の訴えにおいては,自らがその給付を請求する権利を有すると主張する者に原告適格があるというべきである。

実は本件は,各区分所有者に帰属する権利を管理組合が変わって訴訟で追及しているという訴訟担当の問題ではなく,そもそも規約で管理組合に権利が帰属するとしたものを,自分で請求しているだけなので当事者適格としては問題にはならないというものだったのです。

権利能力なき社団は権利義務の主体になれませんが,その場合には,訴訟物の権利が原告に帰属していないということで,請求棄却になるということでしょう。

もっとも,本件のような請求だとおよそ訴訟要件欠缺の問題にはならないというわけではないでしょう。当事者能力の問題は生じうると思われます。すなわち,前提として本件のマンション管理組合の実態に照らして,権利能力なき社団の要件に照らして当事者能力が問題になるということです。

民事訴訟法

第29条(法人でない社団等の当事者能力) 
法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

しかし,それはあくまで当事者能力の問題であり,当事者適格の問題ではありません。したがって,原判決はやはり誤っているということになりましょう。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

One thought on “最高裁,給付訴訟においてはその権利を有すると主張する者に原告適格があると判示

  1. 【★最判平23・2・15:損害賠償等請求事件/平21(受)627】結果:破棄差戻し

    要旨(by裁判所): 給付の訴えにおいては,自らがその給付を請求する権利を有すると主張する者に原告適格がある http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110215114421.pdf <裁判所ウェブサイト> 掲載ページ <関連ページ> ブログ:民訴新判例:給付訴訟の原告適格 -Mat……

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