幻冬舎株式を大量取得したファンドが制度信用取引による取得であったため,同社株主総会での議決権行使の可否について問題が浮上


幻冬舎MBOの件について,新しい論点が1月31日に日経の法務面に取り上げられていました。遅くなってしまいましたが,このブログでも取り上げておきたいと思います。

幻冬舎経営陣がMBOを目指して公開買付を行ったのですが,さしあたり必要となる議決権の数である特別決議が可能な総議決権の3分の2の取得は,イザベル・リミテッドというなぞのファンドが同社株を大量取得したために阻止されてしまいました。

こうして同社株主総会の先行きが危ぶまれていたのですが,1月末に日経で報道された内容がまた興味深い内容で,そのファンドは幻冬舎株式を制度信用取引で取得したものであるというものでした。

これは大量保有報告書から明らかになったものです。

 

この制度信用取引ですが,権利処理の対象として議決権は含めていないので,イザベルは議決権行使ができないのではないかという問題提起がされています。

たとえば,東証の信用取引の権利処理の説明には以下のように記載があります。

東証 : 信用取引の権利処理

株主総会の議決権、株主帳簿閲覧権、株主優待券等においては、これを権利として処理を行わないものとしています。

イザベルは,大証で立花証券を通じて今回の制度信用取引をしたとされていますので,上記の東証とは場所が異なりますが,ルールは同じです。

大証では以下のような規定を有しています。

制度信用取引に係る権利の処理に関する規則

(議決権その他の権利等)
第 9 条 本所の上場有価証券の制度信用取引においては,株主総会(投資主総会を含む。)の議決権,株主帳簿閲覧権,株主優待券等については,これを権利として処理を行わないものとする。

現引きをしてしまえば,問題なく議決権行使できるのですが,同社の株主構成を考えるとそれがそう容易ではなく,現引きできないまま株主総会の日を迎えることになりそうです。

ちなみに,幻冬舎はこのことについて以下のような発表を行っています。

(経過)主要株主の異動に関する経過のお知らせ

そして,立花証券に確認したとのことで以下のような記述があります。

当社が立花証券株式会社に対して事実関係についての照会を行ったところ、上記株主名簿記載の立花証券株式会社名義の当社株式について、イザベル・リミテッドを含む第三者が議決権行使に係る指図権を保有するものではないとのことでした

これは,はっきり言ってしまったよいものなのか,いささか疑問であり,はたして上記のような言い方を本当にしたのか疑問なしとはしません。

証券取引所のルール上,イザベルは議決権行使の権利処理を受けていないので行使できないということと,法的には当然に指図権をもつものは存在しないことを説明しただけなのではないかと思うのですがどうでしょう。

日経の紙面で論じられていたのはそういうことを踏まえたうえで,証券会社が指図に応じることはどうかという話でしたので,上記のようなルールがある以上,行使できないのだと即断できないように思われます。

幻冬舎の株主総会はもうすぐですので,このような論争が深まる前に期日が来てしまうだけだと思われますし,現引きが難しそうなので,株主総会決議をめぐっての訴訟になるとかそういうこともあまりなさそうです。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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