富士物流,三菱倉庫によるTOBの成立により,富士電機ホールディングス以外の残存株主に現金を給付して追い出すための臨時株主総会および種類株主総会を開催


会社による他社に対する公開買付が成功の後,残った少数派の一般株主を追い出して完全子会社にしたいということはよくあり,そのために使える手法が会社法には用意されています。これをコンボのように組み合わせて,残存株主を追い出すことがよくあります。

このブログでも何度も紹介していますが,公開買付→普通株式を全部取得条項付種類株式に定款変更→株主総会決議で全部取得条項付種類株式を取得,この際,対価は割当比率を調整した種類株式にして,TOBを成功させた株主以外には端数しか割り当てられないように調整→会社法の雑則にある端数株式の現金処理の規定に依拠して現金処理,と行うことになります。

第234条(一に満たない端数の処理)

次の各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の株式を交付する場合において、その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数があるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければならない。

一 第百七十条第一項の規定による株式の取得 当該株式会社の株主

二 第百七十三条第一項の規定による株式の取得 当該株式会社の株主

三 第百八十五条に規定する株式無償割当て 当該株式会社の株主

四 第二百七十五条第一項の規定による新株予約権の取得 第二百三十六条第一項第七号イの新株予約権の新株予約権者

五 合併(合併により当該株式会社が存続する場合に限る。) 合併後消滅する会社の株主又は社員

六 合併契約に基づく設立時発行株式の発行 合併後消滅する会社の株主又は社員

七 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得 株式交換をする株式会社の株主

八 株式移転計画に基づく設立時発行株式の発行 株式移転をする株式会社の株主

2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。

3 前項の規定により第一項の株式を売却した場合における同項の規定の適用については、同項中「競売により」とあるのは、「売却により」とする。

4 株式会社は、第二項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)

二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額

5 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

6 第一項から第四項までの規定は、第一項各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の社債又は新株予約権を交付するときについて準用する。

現金化の手法は,234条の1項ではなく,2項のほうです。競売をしたら誰が株主になるかわかりませんので,完全子会社化しようという目的に反するからです。

 

この仕組みを活用して,少数派の一般株主の追い出しを行った事例がまたありましてので,取り上げておきます。

株主総会 – IR情報|3PL・物流・倉庫ソリューション 富士物流株式会社

ただし,この事例のリリースにはこれまでにこのブログで取り上げた類似の事例では気がつかなかったのですが,目が留まった点があります。

今後の単元未満株の買い増しと買取請求についても案内があるのです。

上記のスキームを実施しますと,TOBを成功させた株主以外は,小数点以下の株式数しか持たず,強制的に現金化されてしまいますので,単元未満株の処理など出てこないはずのことです。買い増し請求をされたら,完全に追い出そうとしているのにそれに逆行してしまうのですから,たまったものではありません。

実はこの単元未満株の買い増し等は,全部取得条項に基づいて取得がなされる前の買い増し等についての案内であり,買い増しをしてもすぐに取得され,比率を調整された株式の割当を受けるので,すぐに端数株式になってしまう筋合いのものに過ぎません。

この先,株主権を行使したい場面というのはあまりないでしょうから,実際には行使されることはあまりないのではないかと思われます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

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