住友電工などがNTT等向けの光ファイバーの販売においてカルテルを結んでいたとして、公取委から約68億円の課徴金納付命令を受けました。
この際、住友電工は自ら名乗り出ることで減免を受けられるいわゆるリーニエンシーを申請しませんでした。このことを捉えて、同社の株主が、リーニエンシーを申請しなかったために課徴金が多くなり会社に損害を与えたとして、取締役等を提訴するように同社監査役に提訴請求を行っており、それに対する不提訴理由書が送付されたことが、弁護団のウェブサイトで明らかになりました。
不提訴の理由については、同社監査役は取締役等には過失がないとしているのですが、その中でリーニエンシーについては、立ち入り検査を受けたあと、直ちにリーニエンシーの準備をしたものの、あまりに急に3社までの申告が行われてしまい、間に合わなかったとして過失がないとしています。
これだと、普段から準備をしておくべきではないかということになりますが、本件ではこれに先だって、取締役たちは当該分野の担当取締役まで含めて立ち入り検査までカルテルを知らなかったとされており、リーニエンシーの準備を命じるのが遅れたのは当然ということになる事実があるとされています。
内部統制システムの構築やリーニエンシーの申請を行う体制も整備されていたとしており、全体として過失はないとされています。
取締役の任務懈怠として考えるならば、カルテルが行われていることを知らないならば、体制の構築くらいしかやっておけることはないということはまあ納得できそうですが、すると取締役は独禁法に抵触する行為が具体的に行われていることを知らないほうがよいということになりかねず、この点については異論もありそうです。
また、そもそもリーニエンシーが間に合わなかったということを任務懈怠としてよいのかということ事態が議論のありそうなところです。
リーニエンシーをめぐっては、こういう問題がおきうることは予想されていましたが、具体的な事例が目に留まりましたので、取り上げました。株主が自ら提訴するのかまだわかりませんが、仮にするのだとすると意義の大きな裁判になりそうです。
もっとも、カルテルを知らなかったとしてリーニエンシーに着手したという前提ではなく、それ以前に取締役の任務懈怠がなかったかについての争いも激しくおきうる事例ではあるので、正面から上記の争点が問題になるかはまだ判らないところではあります。