第三者割当をしたのに、割当先がすぐに株式を譲渡してしまったという事象をまれに見かけますが、それに類似した事例がありました。
これは、JASDAQ上場のプラコーでのことで、単なる第三者割当先がすぐに譲渡したというだけではなく、さらに保有期間を確約していたのにその期間の経過より前に譲渡をしたという、すぐに譲渡した場合よりも問題のありそうな譲渡事例です。
櫻井伸行氏が第三者割当により保有していた当社株式を譲渡した経緯
この事案はやや複雑です。
プラコーが平成22年3月31日に第三者割当増資をしているのですが、その際の割当先の一部である個人が、2年以上の保有を確約しながら、8月に相次いで市場で割当分を売却しているというものです。
保有の確約は会社と株主の債権的なものですので債務不履行の問題になるほか、新株発行の際に開示をしており、保有期間についても開示をしているため、金商法の開示規制のほうでも問題になりうる事態です。
この譲渡について、当該割当先は、勤務先のコンサルタント会社が利益相反を避けるため社員の株式保有を規制する内規を7月末に設けたために、その規制に従ったものだとしています。
しかし、譲渡前にプラコーに報告をすること等の義務を遵守しておらず、同社は完全に事後的に知ったということを強調しています。
会社法の観点からは第三者割当増資であることから、割り当て価格の妥当性が問題になることが想起されます。
本件でも第三者委員会を設けて第三者割当先とその内容について検討をしています。
結果としては妥当な第三者割当という判断になっているのですが、一般論として考えると、このような場合の検討においては会社にとって業務提携のスポンサーとなってくれる割当先である等の事実を考慮するために、それらの効果を見込んで価格のディスカウントを許容するという判断はありえます。すると保有期間の確約は、提携の実施を義務付けるため拘束ということになるので、それが遵守されないのは、翻って第三者割当の適法性も問題になりかねない事態かもしれません。
もっとも、本件はあくまで個人であり、上記のような業務上寄与があるとは思えませんが、一方で本件の割当先の個人は、同社に対して金銭消費貸借を行っており債権者であり、第三者割当増資のほかにも同社の株式を市場から買い付けており、株主の地位にあるという事実があります。
また、同社の株価を見ると、第三者割当増資後は上昇しているのですが、その後下落に転じ、当該譲渡が行われた8月には低迷しており、当該割当先は若干の損失を被って譲渡をしていることが伺われます。
公表された事実からはなんとなく事実関係が完全には判然としないのですが、割当先と会社の債務不履行の問題は当然生じそうですが、それ以外の会社法上の問題、金商法上の問題については、違法というほどのことではないように伺われます。
しかし、上記リリースは、文章において「です・ます」体と普通の常体が混在していたり、あまり一般的ではない略語が散見されるなど混乱している感じがあります。根拠のない感想に過ぎませんが、上記事実以外にも色々と複雑な事情があるのかもしれません。