このブログでは取り上げていませんでしたが、半導体製造装置のエフオーアイという会社が、粉飾決算をして東証マザーズに上場、発覚して破産手続きが開始され、上場も廃止されるという驚くべき事件がありました。
この上場によって誕生した株主が、役員等に対して損害賠償請求を提起しましたが、その中に東証まで被告に入っており、注目されています。
エフオーアイ被害株主弁護団リリース
本件訴訟の被告は以下の5種類で、それぞれ請求の根拠が異なるという非常に複雑な問題となっています。しかし実質的に捉えると簡単な話で、粉飾決算をした者とそれを見抜けなかった者に損害賠償請求をしているということです。
①FOI社の役員8名、
②監査証明をした公認会計士2名、
③元引受金融商品取引業者10名、
④売出所有者3名、
⑤東京証券取引所等2名
このうち①から④は、主位的構成としては金商法に特に法定された各種の責任を根拠とするものであり、実際に発動されるのは珍しいことから、貴重な事例になると思われます。
本件でさらに珍しいのは⑤で東証が被告に入っているということです。これは上場時から粉飾決算であったということから、東証も見抜くことができなかったという事実があることから責任があるとするものです。
金融商品取引所に上場審査に関して特段の責任は法定されてないので、根拠は民法の709条になっています。そのため立証に困難がありそうです。
しかし、上場がされなければ株主になっていないことから因果関係があるように考えられることなど、実は一般的な金商法の事件と違い民法の不法行為構成によることの困難さはやや薄れるのではないかと思います。
問題となるのは(②③の被告にも言えることですが)、過失があるかということになると思われます。上場審査における注意義務がどこまで求められるのかという点で重要な問題が議論される事件となりそうです。
もっとも、上場時から粉飾ということはそうそうないはずなので、ここで東証の注意義務についての法理が確立しても再び登場する事態はあまりないはずだと思います。