株式買取請求権見直しの機運


かなり前になりますが、日経の法務面で6月28日に取り上げられた記事で、株式買取請求権の濫用について述べられていました。

要するに、ファンドや法人株主が、保有株の処分の機会に利用しており、問題となっている組織再編等については本心から反対ではないのではないかというもので、効果のほうが自己目的化しているとしてこれを想定外の行使であるとして、買取請求権の行使を受けた会社側から批判の見解が示されていました。

この行使を受ける側の株式買取請求権に対する懸念はかなり強いらしく、経済産業省が公表した「今後の企業法制の在り方について」でも株式買取請求権の見直しが挙げられています。

 

しかし、日経の紙面でも述べられていましたが、株式買取請求権は反対株主が行使できるものですが、本心から反対の意思を有しているといったことは要件になってないと考えられます。問題となる組織再編等の行為について株主総会で議決権を行使できない株主はすべて反対株主に入ってしまいますが、こういった点からも本心は特段問題としていないと考えられます。

議決権行使ができる株主についても、あえていうなら反対することをあらかじめ表明してそのとおりに反対の議決権行使をしたら、買取請求ができることを認識している以上、そういう意味での反対の意思はあるというほかないのではないかと思います。

 

要するに投資ファンドなどが濫用しているという批判なのですが、組織再編が起きて株式買取請求権で高く会社に売りつけることができると見込めるかは微妙ですし、組織再編を抑制させてしまうかといえば、それは反対株主がかなり多数ということになりましょうが、そうなるとそもそも否決されかねないので、実のところ、株式買取請求権のせいで生じる実害は、買取価格をめぐって厄介な事態になるということに尽きるのではないかと思われます。

これについては、かなり長期の争いになる上、法定利率がかかってくるために馬鹿にならないという副産物もあり、懸念はもっともだと思います。しかしだからといって、株式買取請求権を忌避するのは、少数株主が閉じ込められてしまうことを避けるための制度であることを考えると、過激な反応に過ぎると思われます。

そもそも金を払えば追い出せるというのは会社のためにもいいことであるというのがそもそもの制度設計の発想だと思われます。

 

しかし、株式買取請求権が今のままでいいかというとそれも別論であろうと思います。実のところ、少数株主最後の手段であるところの株式買取請求権ではあるものの、費用の関係上、価格決定の申立てまで駆使して争えるのは、資金力のあるファンドや法人株主に限られてしまいかねません。すると少数の個人株主が利用していないではないかとして批判するのも妥当するかもしれません。

よって改められる点はあると思いますが、それでも本心からの反対かではなく、株式買取請求権の制度運用の改善であるべきではないかと考えます。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

2 thoughts on “株式買取請求権見直しの機運

  1. 同感です。
    株主から退出する以上、経営方針に大賛成でないことは間違いないわけで、制度設計がまずいために、何が「本来の趣旨」に沿った行使なのか、不明朗なのだと思います。
    制度を変更したいというのはわかりますが、「濫用的」利用というのは筋違いと思います。
    市場売買できる株式については、市場で売却すればよいから、原則買取請求権なし、というのはどうなんでしょう・・・

  2. 市場売買できる株式については、市場で売却すればよいから、原則買取請求権なし、というのでは駄目だと思います。
    買収者や親会社が対価(TOB価格や株式交換対価)をわざと低い価格に設定して市場株価を下方誘導した場合に、被買収会社や子会社の少数反対株主が「公正な価格」で株式の買取を求めることが遮断されてしまうからです。
    この裁判例は参考になると思います。
    http://homepage3.nifty.com/4757inte/index.htm

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