大阪地裁、ダスキン株主代表訴訟で勝訴した原則株主が会社に費用等請求をした訴訟で、弁護士費用として8000万円を一部認容


少し前の事象ですが取り上げます。

株主代表訴訟(責任追及の訴え)で勝訴すると、訴訟追行をした株主は費用や弁護士報酬を会社に請求することができることが会社法の規定で定められています。

第852条(費用等の請求)

責任追及等の訴えを提起した株主が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において、当該責任追及等の訴えに係る訴訟に関し、必要な費用(訴訟費用を除く。)を支出したとき又は弁護士若しくは弁護士法人に報酬を支払うべきときは、当該株式会社に対し、その費用の額の範囲内又はその報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができる。

2 責任追及等の訴えを提起した株主が敗訴した場合であっても、悪意があったときを除き、当該株主は、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する義務を負わない。

3 前二項の規定は、第八百四十九条第一項の規定により同項の訴訟に参加した株主について準用する。

この規定に依拠して株主が会社に費用請求をした例がどれほどあるかはよくわからないのですが、ダスキン株主代表訴訟事件で株主がこの費用等請求をして訴訟を提起しており、大阪地裁で一部認容がなされました。

ダスキンの株主代表訴訟は平成20年2月に確定しているので、本件の請求は会社法の上記規定に依拠してのものだと思われます。

株主は弁護士報酬として4億円の支払いを請求していたのですが、これに対して、大阪地裁は代表訴訟の結果、旧経営陣が支払いを命じられたうち、すでに会社が回収した金額に依拠して、8000万円を相当としてダスキンに支払いを命じました。

時事ドットコム:弁護士報酬は8000万円=ダスキン株主代表訴訟-大阪地裁(2010/07/14-19:11)

「ダスキン」(大阪府吹田市)の旧経営陣に対する株主代表訴訟で勝訴した株主が、弁護士報酬として同社に4億円の支払いを求めた訴訟の判決が14日、大阪地裁であった。西川知一郎裁判長は「弁護士らの要した労力や時間には相当のものがあった」と述べ、8000万円の支払いを命じた。

(略)

今回の判決は、同社が既に計約7億4680万円の賠償金を回収したと指摘し、社会通念上、弁護士報酬は8000万円が妥当と結論付けた。

(略)

 

上記の条文の定めからわかるとおり、株主が支出した費用の全額を会社に請求できるわけではなく、相当と認められる金額にとどまります。いくらでも支出されてしまうと会社財産を毀損してしまうからですが、どうやって相当な範囲に画するかというのは中々難しい判断です。

この件では、代表訴訟で認められた金額ではなく、この時点までに会社に支払われた賠償金の金額を考慮したうえで、相当な範囲を計算していることが報道から伺われます。

会社に入ってきた金額よりも多い金額を費用として払ったら本末転倒ですので当然といえます。

しかし、あまりに巨額の賠償を命じられて役員が破産してしまったら会社が回収できるのは認められた金額よりもはるかに低くなっています。弁護士報酬は場合によるでしょうが、会社が回収できた金額ではなく代表訴訟で認められた金額に依拠して算出された場合には、会社に請求できる費用の額を、回収された金額に依拠して相当と認められる額を定めると、まったくもって足りないということも生じかねません。

会社の回収金額に拘泥せず、事象ごとに相当と認められる金額の判断を分けてしまうことも可能なのかもしれませんが、難しい判断が求められることもあるかもしれない規定であると始めて認識した次第です。

裁判例情報

大阪地裁平成22年7月14日判決

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

2 thoughts on “大阪地裁、ダスキン株主代表訴訟で勝訴した原則株主が会社に費用等請求をした訴訟で、弁護士費用として8000万円を一部認容

  1. ダスキン株主代表訴訟の弁護士費用請求訴訟の判決全文が公開される

    JAPAN LAW EXPRESS: 大阪地裁、ダスキン株主代表訴訟で勝訴した原則株主が会社に費用等請求をした訴訟で、弁護士費用として8000万円を一部認容の関連情報です。 この判決の全文が裁判所のウェブサイトで公開されました。 大阪地裁平成22年07月14日判決 平成20(ワ)16888 報酬金請求事件 まず、上記リンク先の従前の記事の訂正なのですが、根拠となる条文は旧商法の268条の2第1項でした。 商法 【弁護士等の報酬の請求、損害賠償の責任】 第268条ノ2 1 第二百六十七条第三項又ハ…

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