パワハラについての裁判例がまた一件だされたので、取り上げます。
外資系消費者金融の「日本ファンド」において、契約社員の労働者が、会社と(元)上司に対して、不法行為による損害賠償を請求した事案で、東京地裁は不法行為を認め請求を一部認容しました。
報道によると、上司の行った行為というのは、タバコ臭いとして真冬に扇風機で強風をあてたり、「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」との内容の始末書を書かせたり、「よくこんなやつと結婚したな」などと原告とその場にいない妻を侮辱する言葉を吐いたり、殴るなどしたことが認定されている模様で、かなり悪質な行為が行われたことが伺われます。
たばこ臭いと扇風機、パワハラ認定146万円 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)(2010年7月28日01時26分 読売新聞)
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石井浩裁判長は「嫌がらせ目的で不快感を与え続け、著しい精神的苦痛を与えた」とパワハラを認定し、同社と元部長に計約146万円の支払いを命じた。
判決によると、元部長は2007年12月、喫煙者の契約社員2人に向け、一日中、風が直接当たるように扇風機を固定。約半年間にわたって風を受け続けた1人は抑うつ状態との診断を受け、約1か月休職した。また、元部長は3人に「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」という内容の文書を提出させたり、怒りにまかせて突然殴ったりしていた。
パワハラ:真冬に大型扇風機で「強風」 パワハラ認定、賠償命令--東京地裁 – 毎日jp(毎日新聞)毎日新聞 2010年7月28日 東京朝刊
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訴えていたのは、30~40代の契約社員ら3人。判決などによると、同社の部長だった元上司は07年12月から約半年間、原告らに「たばこ臭い」などと言って業務用大型扇風機3台を「強風」にし、後方から一日中風を当て続けた。真後ろまで近づけて風を当てることもあり、最も強い風を受けていた1人は08年6月にうつを患い、1カ月間休職した。
また、元上司は原告らに「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」との内容の始末書を書かせたり、「よくこんなやつと結婚したな」などと原告とその場にいない妻を侮辱する言葉を吐くこともあった。
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会社側は、空気を循環させただけと反論したそうですが、認められなかった模様です。特定の社員の後ろから扇風機の風を浴びせている上、同じ特定の社員に他にも嫌がらせのような行動をしている以上、説得力がないのは当然といえましょう。
もっとも、判示の中でパワハラという語を用いているわけではなさそうですが、このようにひどいと不法行為になるのは当然のことですので、特に違いはないでしょう。
不法行為にはならないが、パワハラにはなるというものの存在を観念することはあまりできないように思えますので、パワハラとは社会現象としてのキーワードとしての意義があるのでしょう。
裁判例情報
東京地裁平成22年7月27日判決